神野大地「つまらないプライドは捨てて」トラックのレースに参加し、スピード練習は順調 仙台ハーフがMGCへの試金石になる (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun

 神野は、4月23日、日体大記録会の5000mに出場した。2021年11月の東海大記録会以来、1年半ぶりのトラックで、タイムは14分12秒と設定より5秒オーバーしたが、まずまずだった。2週間後の日体大記録会10000mは、暴風のなか、厳しいレースになったが29分37秒で、レースコンディションを考えると悪くない結果だった。

 しかし、トラックでのレースが1年半ぶりというのは、かなり空いた感がある。そこに何か理由があったのだろうか。

「自分はマラソン選手なのでトラックはもういい、そこまで熱量を注がなくてもいいんじゃないかって思っていたのと、トラックへの苦手意識があったので、もう出たくない気持ちもあったんです。それに変なプライドもあって、5000mで速い選手が集まる最終組よりも前の組で走るくらいなら、別に練習で5000mと同じような刺激を入れればいいじゃんって思っていたんです。でも、今は目標を達成するために自分と向き合って、自分の状態を上げていく必要があるので、つまらないプライドは捨てて、トラックで走ろうと思い、久しぶりに出場しました」

 神野が今、自分の弱さと向き合ってポジティブにトラックのレースや練習に臨めているのは、今年に入って自分の走りに手応えを感じているからでもある。2月の丸亀ハーフでは、62分57秒とほぼ設定どおりのタイムで走ることができた。同じ2月の福岡クロカンではスピードがある塩尻和也(富士通)や三浦龍司(順天堂大)らに続き4位入賞を果たした。そこでアジアクロカン(ネパール)の出場権を得て、3月に日本代表として出場したレースでは2位になり、表彰台に上がった。

「昨年まではレースで自分の走りができなかったり、プレッシャーに負けたりすることが多かったんですけど、今年は丸亀でしっかり走れたし、福岡クロカンでは10000mを27分台で走る塩尻選手らと15秒ぐらいしか変わらないタイムで走れたのは自信になりました。日体大の5000mも10000mも自分の目標タイムには届いていないですけど、走りについては悪くないので、MGCに向けて着実にいい準備ができている感じですね」

 この日、神野のポイント練習を見守っていた藤原新コーチは、「ここまで悪くない」と語る。

「丸亀はよかったですし、福岡もいい走りができていたと思います。海外では日の丸をつけて走ったので、トップ選手としてのアイデンティティを刺激されたっていうところがあると思いますね。そういうところでひとつ結果が出ると、調子が上がってくるんです。日体大は、風の影響もあって目標タイムをクリアするのは難しかったですが、走り自体は悪くない。70%、80%のなかで無理やり調子を上げようとするんじゃなくて、しばらくはそのレベルを維持するだけでいい。神野は、狙っているところのレベルまでは確実にきているので」

 神野は、5000mのレースが10000mのレースに活きたと考えている。

「いつもは地面に足が着地した時、あとから体がグっとついてくる感じで無駄な力を使っているなぁと思っていたんですけど、10000mの時は体全体がスムーズに動いていたんです。それは、やっぱり5000mに出たからだと思うんです」

 5000mは、当然だが10000mよりも早い動きになる。距離が短く、よりスピードを出せるからだ。5000mを走って早い動きに慣れていると10000mは余裕をもってラクに走れるようになる。

「10000mが最初にきたら、いい動きで走れたかどうか......。たぶん、後傾になって体が遅れてついてくる感じになっていたと思います」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る