「國學院史上最高だよねって自分たちで喜んでいてもダメ」前田康弘監督が描く箱根駅伝優勝への道。「その先は常連校から強豪校へ」 (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by共同

──選手層は浦野選手の時代からかなり厚くなっているように見えます。

「國學院という視点でとらえると、浦野と土方(英和・現旭化成)が火つけ役になって、年々、選手層が厚くなってきていると思うんです。でも、國學院史上最高だよねって自分たちで喜んでいてもダメなんですよ。過去の自分たちのチームと比べるのではなく、今の本当のトップチームと比べてどうなのかという目線を持たないといけない。今でいうなら駒澤大が基準になるわけですが、そこと比べて、どうなのか。他のチームも強化がすばらしいですし、チーム内の競争も激しく、毎年、強くなっています。自分たちも選手層が厚くなり、強くなったから順位も必然的に上がるだろうと考えていたら箱根は勝てないですし、優勝はいつまで経っても夢物語でしかないでしょう」

──國學院大はチーム内の競争が少なく、メンバーが固定化されている印象です。

「そこがうちと駒澤大、青学大との絶対的な差かなと思っています。うちもチーム内の競争という部分で、もっとキャパを増やし、レベルを上げていかないといけない。エース格の選手が確実に走るというのはあるんですけど、それ以上がないんです。ひとりが転げてしまうと、その替えがきかないので、たちまち苦しい展開に追い込まれてしまう。駒澤大でいうなら花尾(恭輔・3年)君たちの代は高いレベルの選手がすごく多いですし、1年生も山川君、伊藤(蒼唯・1年)君とかいい選手がどんどん出てくる。スカウティングのよさもありますが、うちもそこの育成はもっとやっていかないといけないと思っています」

國學院大の新体制は、すでにスタートしている。主将は伊地知が務め、副将は平林と山本(歩夢・2年)の2人体制になった。順調に成長している平林らがいよいよ上級生になり、重要なシーズンになってくる。

──伊地知主将、平林選手、山本選手の副将は早くから決めていたのですか。

「そうですね。伊地知は気持ちが強くて、発言力があるんですけど、ちょっと強すぎる。それを中和し、かみ砕いて話ができる人が必要なんですけど、ふたりはそのタイプ。それに伊地知は、走力もある。競技力がない選手が上に立つと、チームが締まらないですし、その選手自身が大変な思いをするんです。3人のバランスがよいと思うので、チームをうまくまとめてくれると思っています」

──副将のふたりのうち、どちらかが4年時の主将になる感じですね。

「それが自然だと思います。1、2年は、自分のことで精いっぱいなんですけど、3年ぐらいから徐々にチーム全体を見られるようになっていくし、そういう視点を選手に求めています。4年になっていきなり主将ではなく、3年で上に立って見てきたことを4年で主将になって活かすことが理想ですので、準備期間ということでふたりを副将にしています」

──浦野選手と土方選手が卒業し、平林選手が入学してきた時、彼が4年生になった時、優勝を狙えるチームにしたいと監督は言っていました。それよりも早くチームが仕上がってきているのではないでしょうか。

「言った以上は、そこに持っていきたいですね。2019年の出雲の優勝は、狙いにいったのもありますが、勝てるのかなと半信半疑の部分もありました。今回の箱根での駒澤大の勝ち方を見てみると、しっかり勝てるチームを作って勝つというのが本物だと思うので、そういうチーム作りをしていきたい。箱根で優勝争いができるチーム作りを進めつつ、今シーズンは3大駅伝のうち、ひとつは獲りたいと思っています」

──それが箱根であれば、記念すべき100回大会での悲願達成になります。

「優勝という言葉を今年もチーム内でしっかり共有していきたいですね。僕らはチャレンジャーなので、その精神を維持しつつ、強気に強豪校にぶつかっていきたい。そうして頂上に立ちたいと思っています。その先は、常連校から強豪校になるのがテーマだと思っています。5年連続してシード権を獲得したから強豪校というわけではないと思うんです。常に上位で戦っている駒澤大、青学大、東洋大とかはみんなが認める強豪校だと思うので、そういう存在価値を自分たちも身につけていきたいと思っています」

プロフィール

  • 佐藤 俊

    佐藤 俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。

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