東洋大・酒井俊幸監督が箱根駅伝で抱いた危機感。鉄紺のチームが狙うのは優勝、「早く本来の景色に戻さなければいけない」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

 7区から箱根経験者を並べた復路は、当初から『そこからしっかり上げていこう』と自信を持っていた。特に8~10区は、関東インカレの1部ハーフマラソンで自己新を出して2位と5位になっていた梅崎蓮(2年)と木本がいて、2年連続で10区を走り、前回は区間2位だった清野太雅(4年)を置くことができた。その3区間は選手を信じ抜いた上での起用。8区の木本の区間賞獲得に続き、9区の梅崎は区間4位。10区清野は区間9位ながら、東京国際大を抜いて10位を死守と、シード権獲得の力になった。

「4年目でやっと区間賞を獲った木本や、マラソンと両立をした柏や清野の4年生が最後の箱根をしっかり走ってくれました。練習や食育、フィジカルの向上に真摯に向き合い、努力のできる姿勢を下級生に見せてくれたと思います」

 結果は10位だが、3位の青学大とは4分01秒差。酒井監督は「10番のチームが何言っていると言われるかもしれないけど......」と苦笑しながらこう続ける。

「今回は9区で3~8位があれだけ大混戦になったので、3位とのタイム差を考えればチームマネジメントがうまくいけば十分に狙えたし、他大学もそう思っていると思います。近年は実力が拮抗しているので、主力が1枚欠け、2枚欠けになってしまい、さらに区間2桁が思わぬアクシデントとして出てしまったら、一気にシード権争いとかその圏外に落ちてしまう可能性があります。ただ、以前優勝争いをしている時は、2位でも今回の10位より悔しさを前面に出す選手も多かったです。その時は悪くても3位と思っていたので、やっぱり優勝を狙えるくらいにならないと、3番には入れないと思います」

 それでも次を考えれば、今回体調不良で使えなかった選手はすべて3年以下。再び3位以上を目指すチームを作ることができると酒井監督は言う。

「松山の復活がなければ成し遂げられないことだと思いますが、入るべき選手がしっかりエントリーできるようになることと、あとは何より本来の鉄紺のチームを作っていくことだと思います。その点では、次は必ず上位争いに加わることが必要。再びシード権争いという形になってしまって10位が2年続けば、それが当たり前の景色になってしまうから、それを早く本来の景色に戻さなければいけない。今回3区の小林がこれを機に伸びてくれれば次も往路でいけると思うし、今回9区の梅崎も往路でも復路でも行ける選手。ふたりともまだ2年で伸び盛りだから、これから1年かけて1段も2段もステップアップして、次期エースを目指す石田とともに区間賞を狙える位置に行ってほしいですね」

 救いは、全日本も箱根も予選会なしと言う酒井監督は、「100回大会へ向けてじっくりやっていきたいと思います」と決意を口にする。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る