神野大地、再起動。マラソン日本記録を目指して下した3つの決断 (5ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

「やめたいとか、逃げたいとか、本当はそれが最も楽な選択だと思うんです。でも僕はこれまであきらめずに、努力は裏切らないと思ってやってきた。結果が出ていないですけど、それはまだ努力が足りないということ。結果が出るまでが努力ですし、僕は自分の人生でそれを証明したい。だから、自分の気持ちが続く限り努力していきたい」

 浜松ではすでに治療院を見つけ、お気に入りのサウナもある。サウナでは、ある市民ランナーにこう声をかけられたという。

「結果も大事ですが、神野選手の生き方がすごく好きです。これからも自分の生き方を貫いてほしい。そういう神野選手を応援します」

 ちょうど、浜松でびわ湖マラソンに向けて調整していた頃で、その言葉が胸に刺さった。結果は大事だが、あきらめずに努力する自分の想いを応援してくれる人がいることに救われた。

「プロとしての活動は間違っていなかったと思いましたし、そういう人がいることを大切にしていきたいと思います」

 レースで結果を残せず、精神的に叩きのめされた。だからこそ、いろんな気づきがあったと神野は言う。人の真価はそこからどう動くかで決まる。神野にとっては茨の道が続くが、大学時代は「3代目・山の神」の称号を勝ち得た男である。これからどんな道を駆け上がっていくのか、大いに期待したい。

(おわり)

Profile
神野大地(かみの・だいち)1993年9月13日、愛知県生まれ。セルソース所属。中学で本格的に陸上を始め、中京大中京高校から青山学院大に進学。大学3年時には箱根駅伝往路5区で区間新記録を樹立し、"3代目・山の神"としてファンに親しまれる。大学卒業後は実業団のコニカミノルタに進んだのち、2018年5月にプロに転向。2019年にアジア選手権マラソンで優勝を飾る。現在は浜松に拠点を移し、世界大会での活躍を目指しトレーニングに励んでいる。

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