【箱根駅伝】「強すぎる」青学大はこうして生まれた (3ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by AFLO SPORTS

「大学に入ってから、最初に突っ込んで最後は粘るというパターンが多かったが、神野(大地)さんから『2区はラスト3kmで30秒ひっくり返せる』と言われていたので……」と、冷静だった。その思惑通りで「ラスト5kmはきつかったけど楽しかった」という走りで、目標の1時間08分切りを実現する1時間07分45秒で走ったのだ。

 青学大の3区は三大駅伝初出場の渡邊利典。原監督は“つなぎ”の意識もあっての起用だったのだろう。そこをキッチリ走らせたうえで、4区の1年生・田村和希には、5区に神野がいるという安心感を持って突っ走らせる。その狙いは当たった。3区は区間5位という堅実な走りとなり、4区の田村は区間記録を塗り替えることになった。

 もちろん、それ以上に機能したのは5区の神野だった。原監督は「1時間17分30秒くらいで走ってくれる」と期待していた。だが本人は「1時間18分30秒を目標にしていたが、走り出したら思った以上に体が動いたので……」と、抑えていく予定だった最初の5kmを、14分47秒というハイペースで突っ込んだ。そのタイムは東洋大の柏原竜二が1時間16分39秒の区間記録を出した12年より19秒も速いタイムだった。

 原監督はそれを不安視することなく、「タイムが速いのに動きはゆったりしていた」と、安心して見ていたという。

 その後、勾配がきつくなっても神野の動きはまったく変わらず、軽々と坂を上っていく。最後の下りでは加速し、最後まで切れ味のある走りのまま、1時間16分15秒で走りきった。不滅とも思えた柏原竜二の記録をアッサリと、しかも24秒も上回るものだった。本人でさえ「ビックリしている」という大記録。2位に上がってきた明大には4分59秒の大差をつけたのだ。

 それに対して駒大の馬場翔大には力みもあった。昨年以上の記録を期待され、しかも実力未知数の神野が参戦。馬場にとっては前を行く東洋大の設楽啓太をひたすら追いかけた昨年のような、“無欲の挑戦”というわけにはいかなかった。

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