小田凱人に国枝慎吾がエール 世界ランク1位の重圧とどう向き合えばいいのか (2ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 植原義晴●写真 photo by Uehara Yoshiharu

【世界ランキング1位の重圧】

 車いすテニスの大会は、毎年4月に福岡県飯塚市で行なわれるITFスーパーシリーズのジャパンオープンが知られているが、国内で開催される国際大会は少ない。そんななか、今大会のグレードはITF2ながらATP大会と同時開催で、テニスの聖地・有明で開かれるとあって注目度が高かった。

 パラリンピックのダブルス金メダリストでグランドスラム常連のステファン・ウデ(フランス)は大会に初めて参加し、「観客もメディアの数も日本が一番多い。車いすテニスに対する理解もあり、世界的に見てもユニークな状態だと思う」とコメント。小田もまた、「(日本での)注目度はグランドスラムよりも今大会のほうが大きいと感じた」と話す。

 小田は前述の準決勝で波に乗り切れなかった点について、「プレッシャーはあった」と語る。それは多くの観客が見守るホームで戦う難しさではなく、世界ランキング1位としてどう戦うかという重圧だったという。準決勝後の記者会見では「国枝さんもこういう気持ちだったのかな......」と、ポツリとつぶやき、優勝後のスピーチでも「昨日はここで負けたら、もうお客さんに観にきてもらえないかもしれないと思った」と、トップゆえの責任を感じていたことを明かす。

「ランキングが2ケタのころは(格上を)食っていくぞ、という感じだった。ガンガン攻めていくのが僕のやるべきことだけど、1位になったらその熱が消えていくかもしれない怖い感じがある」と、胸の内を吐露した小田。それでも、「若さを活かした熱いプレーは、今の僕には必要だと思っている。それを失わないように、いろんな熱を持ってやっていくことが一番大事だと思う」と、自身の心に正面から向き合う。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る