国枝慎吾の跡を継ぐ思いは「もちろんある」。16歳・小田凱人がグランドスラム決勝の舞台で抱いた新たな決意 (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

【次を担えるような存在になる】

 第3シードの小田にとって今大会は、国枝が去った喪失感と、その穴を埋めるという使命感がせめぎあう、複雑で難しい想いを抱えながらの戦いだったのだろう。

 国枝の跡を自分が継ぐ、との思いはあるか?

 大会の最後にそう問われた時、小田は「もちろんあります」と即答した。

「今大会からそういう気持ちで臨めましたし、たぶんそれは僕だけじゃなく、アルフィ(ヒューエット)もかなり強く思っていたと感じました。それだけの気迫だった」

 だが、そのうえで彼はこうも明言する。

「国枝選手が引退されたことで、皆が俺の出番だと思っているが、その気持ちはたぶん、僕が一番強い。そういう気持ちを強く持つことが、競技のためにもつながると僕は信じてるんで。次を担えるような存在になることを、ひとつ新たな目標として考えています」

 初めて至ったグランドスラム決勝の舞台は、夢見た景色と少しばかり異なっていた。

 それでも、追い続けた背の偉大さをその不在で痛感し、対峙した者の涙に優勝の重みを知った16歳は、メルボルンのコートから新たな決意を持ち返った。

プロフィール

  • 内田 暁

    内田 暁 (うちだ・あかつき)

    編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。

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