車いすテニス・上地結衣「世界1位になるのが早過ぎた」 (3ページ目)

  • 文●スポルティーバ text by Sportiva
  • 写真●五十嵐和博 photo by Igarashi Kazuhiro

伊藤 次に当たるとしたらパラリンピックかもしれないですね。

上地 そうですね。2012年のロンドンパラリンピックもそうだったんですけど、情報が少な過ぎて。シードじゃなくても、シードぐらいのレベルはあるんですよね。なので、私も含めて、他のシード選手も1回戦でいきなりそういった選手に当たる可能性があるんです。それは2016年のリオパラでも、彼女が続けていれば2020年の東京パラでも、変わらないところだと思います。

伊藤 世界は広いというか、選手によっていろんな戦い方があるということですね。

上地 そうですね。テニスのランキングの構成は年間を通して積み重ねていくもので、トップの選手は、年間20大会ぐらいをコンスタントに回っています。でも、それが難しい中、他の方法をしっかり考えて、彼女なりのスタイルというか競技生活を歩んでいるのだと思いますね。

伊藤 では、もしかしたらどこかにすごい選手が隠れているかもしれないですね。

上地 そうですね。国枝選手もおっしゃっていましたが、アジアのレベルというのは、女子も上がってきています。今まではあまり聞かなかった中国の選手が、アジア大会で第2シードの韓国の地元選手に1回戦で勝ったりとか。あとは、タイも今までは今回のアジアパラで優勝した選手しかいなかったんですけど、そこに続くような選手っていうのが出てきているので、これからどんどん伸びてくるのかなとは思っています。

伊藤 いろいろな部分に伸びしろを感じますね。今回、シーズン終盤で負けを経験したことで、リオパラリンピックの時には今よりもより強い1位になっている気がしますね。

上地 結果、そうなのかなと思います。本当に1位になるまでは1位になりたいと思っていましたし、1位になってからは負けたくないと思っていたんですけど、いざ負けると、今負けてよかったのかなと思います。負けて初めて気づくことはたくさんあると思いました。特に今まで以上に他の選手が、私を研究して大会に臨んできているんだな、ということをすごく感じましたから。

(つづく)

【プロフィール】
上地結衣(かみじ ゆい)・写真右
1994年4月24日生まれ。兵庫県出身。エイベックス・グループ・ホールディングス所属
先天性の潜在性二分脊椎症で、成長するにつれて徐々に歩行が困難となり、車椅子を使用するようになった。11歳のときに車いすテニスを始めると、あっという間に才能を開花させ、14歳という若さで日本ランキング1位に。2012年ロンドンパラリンピックではシングル、ダブルスでベスト8。2014年シーズンは、4大大会のシングルスで2勝、ダブルスでは年間グランドスラムを達成し、現在世界ランキング1位となっている。(1月7日現在)

【プロフィール】
伊藤数子(いとう かずこ)・写真左
新潟県出身。NPO法人STANDの代表理事。2020年に向けて始動した「東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会」では顧問を務めている。2003年、電動車椅子サッカーのインターネット中継を企画、実施。それをきっかけにして障がい者スポーツと深く関わるようになった。現在、障がい者 スポーツ競技大会のインターネット中継はもちろん、障がい者スポーツの楽しみ方や、魅力を伝えるウェブサイト「挑戦者たち」でも編集長として自らの考えや、選手たちの思いを発信している。また、スポーツイベントや体験会を行なうなど、精力的に活動の場を広げ、2012年には「ようこそ、障害者スポーツへ」(廣済堂出版)」を出版した。

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