ガールズケイリン若手期待の松井優佳が苦しんだ「卒記クイーン」のプレッシャー「3着以内に入って当たり前の感じが大変でした」 (2ページ目)

  • 加藤康博●文 text by Kato Yasuhiro

「高校のふたつ上の先輩に今、ガールズケイリンで活躍している寺崎舞織さんがいて、私が入学した時にはすでにナショナルチームに選ばれていました。毎月、代表の合宿に呼ばれている姿に憧れていたんですけど、すぐに自分も選んでいただけるようになって。合宿などには一緒に連れて行ってもらっていた感覚なので、当時は特別なことという意識はなかったんですよ」

 国際大会は、恐れることなく思い切り走れることが楽しかった。一方で日本代表として実績を積み上げていくことで、国内の大会では「負けられない」という思いが生まれ、松井の心と脚を縛った。高校3年時はインターハイに照準を合わせてシーズンをスタートしたが、7月のインターハイ本番、ポイントレース12kmで優勝を手にするまで一度も頂点に立てない経験もした。

「この年は本当に苦しかったんです。負けられないっていうプレッシャーを乗り越えられたかどうかわかりません。ただ自分のなかで国際大会よりインターハイで勝ちたい思いが強かったので、最後の最後で勝てたことは本当によかったです」

 感情を表に出すことなく飄々としている松井だが、大きな苦しみを抱えながら壁を乗り越えてきた。その経験が今も武器になっていることは間違いないだろう。

素直に思いを口にする松井 photo by Yasuda Kenji 素直に思いを口にする松井 photo by Yasuda Kenji この記事に関連する写真を見る

【大学で過ごした有意義な時間】

 ガールズケイリンへのあこがれは自転車競技を始めた中学生の時から持っていた。だが高校卒業にあたり、養成所ではなく、同志社大学スポーツ健康科学部へ進学し、競技を継続する決断をする。それにはいくつかの理由があった。

「まずプロになることが、当時はどういうものかわからなかったんです。そんな中途半端な気持ちで目指してもうまくいくわけがないと思ったのが理由です。それに自転車以外のスポーツも好きで、もし競輪選手になれなければ、他のスポーツに関わる仕事がしたいと思っていました。大学で自分の体のことを学びつつ、スポーツマーケティングなどを勉強すれば、将来の選択肢も広がるかなって思ったんです」

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