安楽宙斗17歳、パリ五輪で1932年以来92年ぶりの快挙へ「実力を出しきれば、金メダルは獲れる」 (3ページ目)

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro

【ほかの選手が苦戦する課題をいともたやすく攻略】

 LJCに向けては「持久力トレーニングをやる程度」というが、ほかの日本選手には負ける気はしないという。

「技術的に細かい部分は試行錯誤していますけど、登るという部分に限れば、リードの場合はボルダーよりも難易度は高くないので。持久力のところは、ほかの日本人選手よりも優れている自信がある。だからこそ、圧倒的な差で優勝したいです」

 安楽選手は自分のストロングポイントとして「ひとつのテーマに向き合って深く考える」点にあると自己分析している。自身のクライミングの特長はどこにあると見ているのだろうか。

「僕の登りの特長は、重心のポジションにあると思います。登っていると気持ちは上に行きたがるから、難しいパートがあると力を入れて体を引き上げちゃう。でも、僕はそうした体勢が子どもの頃からイヤなんですよ、疲れちゃうから(笑)。

 登りたいけど、きついことはしたくないから、難しいパートは腕を伸ばして、重心を落としながら登る。そうしていたら、いつしか重心のバランスを取れる登り方になっていましたね」

 安楽選手が特長を生かし、ほかの選手が苦戦する課題をいともたやすく攻略するシーンは、昨シーズン何度も目にできた。

 たとえば、指先で掴む箇所がなく手のひら全体のフリクション(摩擦)で止めるスローパーホールドで、国内外の選手たちが苦戦するなか、安楽選手だけがいとも簡単にぶら下がって次のホールドへとムーブを起こしていって完登した。

 クライミングと聞くと、東京五輪に続いてパリ五輪にも出場する楢﨑智亜選手のような素早い動きを連想する人は多いだろう。あのイリュージョン的な派手な動きは、目を見張るものがある。

 それに対して安楽選手の動きは、まるで知恵の輪がスッと外れたときのような爽快感がある。その動きの奥深さを理解するうえでも、パリ五輪への予行演習として、ぜひBJCでの安楽選手のパフォーマンスはチェックしてもらいたいと思う。

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