プロビキニのトップ選手が明かすフィットネス界のドーピング事情「絶対に使わないで。人生に必要か考えてほしい」 (3ページ目)

  • 武松佑季●取材・文 text by Takematsu Yuki
  • 田中 亘●撮影 photo by Tanaka Wataru

【プロとドーピングの現実】

ーーただし、厳格なドーピング検査がありクリーンさを押し出している「IFBBエリートプロ」と違って、「IFBBプロ」ではドーピング検査がなく、ステロイドなどの薬物使用が黙認されているとも言われています。

「IFBBプロ」の大会は、「競技」ではなく「プロショー」。プロはいかにステージで観客を驚かせ、感動させて、魅力を伝えるかが重要です。だから、覚悟、信念をもってこの世界に来ている人たちに対して、私が(ステロイド)ユーザーに何かを思うことはないですね。

 ただ、IFBBプロの女子カテゴリーは「ビキニ」「ウェルネス」「フィギュア」「女子フィジーク」とあって、私がいる「ビキニ」は筋肉量よりも女性らしい美を残さないといけない。だから他のカテゴリーに比べてユーザーは多くないし、もちろん私自身もユーザーではありません。

 ビキニをやっている女性は、絶対に使わないでほしいと私は思います。魔が差して使っちゃったって子も聞くけど、それをやったってプロになれるかもわからないし、なれたとしても(副作用によって)長い期間、競技を続けられなくなってしまう。それがあなたの人生にとって必要なことなのか。あらためてちゃんと考えてほしいですね。

インタビューに応じるMIHARUインタビューに応じるMIHARUこの記事に関連する写真を見るーー「IFBBエリートプロ」よりも「IFBBプロ」のほうが人数も多く選手層も厚いとのことですが、国内の場合、「IFBBエリートプロ」傘下のJBBFは人気が高いです。

 JBBF所属の選手はプロに憧れていないというか、別にプロを目指してない人が多いのかなという印象ですね。「絶対にアンチドーピングで公平に戦いたい」という自分自身の信念を持っている競技者がすごく多い。

 私のまわりはJBBFの選手ばかりだから、それはすごく感じますね。とてもすばらしいし、カッコいいことだと思います。

ーー 一方で、団体が分裂してしまった以上、「IFBBプロ」を目指すならFWJの大会に出ることが条件となりますが、所属しているだけで「ユーザーなのでは?」という疑惑の目を向けられてしまいませんか?

 正直、それはあると思います。でも、「IFBBプロ」を目指す以上、ある程度それは覚悟してやるしかないんじゃないでしょうか。

 FWJ所属選手でインスタグラムにナチュラルであることを強調して書いている方もいますが、私からするとFWJの時点で疑われてしまうのだから、書く必要ないのになって思います。だったらFWJでナチュラルをうたうよりは、JBBFに行くべきだと思います。

ーー中編では、日本人ビキニアスリートがぶつかる世界の壁についてお伺いします。

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中編<「生まれ持ったものが違う」プロビキニ選手・MIHARUが感じた世界の壁 それでも表現したい「体を磨えることの幸せ」>を読む

後編<いじめで不登校→コスプレに目覚める→日本女性初のプロビキニ選手に! MIHARUが目指す「格闘系2次元キャラ」の理想の体とは?>を読む


【プロフィール】
MIHARU みはる 
1990年、愛知県生まれ。不登校だった高校時代に、SNSで知り合った友人の誘いでコスプレを始め、2次元キャラクターの体を目指して筋力トレーニングもスタート。2016年に「オールジャパン フィットネス ビキニ選手権」でカテゴリー優勝し、翌2017年にはモンゴルで開催された「アジア ボディビル&フィットネス選手権大会」で総合優勝。同年、日本人初の、「IFBBプロ」となり、中国・香港にパーソナルトレーニングジムをオープン。コンテストの審査員、競技者へのポージングレッスンなどを行なう。

プロフィール

  • 武松佑季

    武松佑季 (たけまつ・ゆうき)

    雑誌ライター。1985年、神奈川県秦野市生まれ。編集プロダクションを経てフリーランスに。インタビュー記事を中心に各メディアに寄稿。東京ヤクルトファン。サウナー見習い。

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