秋場所序盤戦で脚光を浴びる北勝富士と琴ノ若――錣山親方がその強さの秘密に迫る (3ページ目)

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

 彼はまた、地道に稽古をする力士でもあります。私の座右の銘は「今日一日の努力」ですが、力士というのはとにかく日々の地道な努力が大切です。北勝富士は31歳にして、これまでの努力が花開いたような感じがします。今後も頑張ってほしいと思います。

 強いて気になる点を挙げるとすれば、自分よりも番付が下の力士と対戦した時にも大関戦のように思いきって当たっていけるのか、ということ。番付が下だからといって、大事に相撲を取るようなことはしないでほしいなと思っています。

 他では、先場所小結で11勝4敗。敢闘賞を受賞して、一躍「次期・大関候補」となった琴ノ若から目が離せません。3日目の玉鷲戦、4日目の隆の勝戦の相撲を見た際には、「次期・大関候補」というより、すでに「大関が見えてきた」という感じさえしました。

 このコラムでも何度か指摘していますが、あえて苦言を呈すなら、腰が高いこと。恵まれた体格の持ち主ですから、腰を割って、さらに前傾姿勢で出ていけば、もっと相手に圧力が伝わるはずです。

 ともあれ、ここにきて土俵上の表情に厳しさが加わってきた琴ノ若。優勝争いに絡むような活躍を期待したいです。なにしろ、琴ノ若の父親は佐渡ヶ嶽親方(元関脇・琴ノ若)。そして、お祖父ちゃんは元横綱・琴櫻、先代の佐渡ヶ嶽親方。琴ノ若の大関昇進が叶えば、お祖父ちゃんの四股名を継ぐという話もあるようですから、なおさらです。

錣山(しころやま)親方
元関脇・寺尾。1963年2月2日生まれ。鹿児島県出身。現役時代は得意の突っ張りなどで活躍。相撲界屈指の甘いマスクと引き締まった筋肉質の体つきで、女性ファンからの人気も高かった。2002年9月場所限りで引退。引退後は年寄・錣山を襲名し、井筒部屋の部屋付き親方を経て、2004年1月に錣山部屋を創設した。現在は後進の育成に日々力を注いでいる。

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