葛西紀明が語るジャンプスーツ問題。公平性を求めるなら「事前の身体測定厳格化と+0cmにするしかない」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Yohei Osada/AFLO SPORT

【問題はスーツではなく、身体測定】

 高梨沙羅のW杯蔵王大会の失格で話題になった計測問題も、葛西は「正確に計ったら全員失格になると思います。だから本当に(高梨)沙羅選手の場合はたまたまでしょうね」と言う。

 元々ジャンプスーツはすべて手作りで、厚い生地を体の形状どおりに正確に作れるわけでもない。「1cmくらい違うことはよくあるから、そこをたまたま計られたらアウトですよね」とも言う。

「でも一番の問題は、スーツというより最初の身体測定だと思いますね。チームごとに国際連盟の審判に呼ばれてショーツだけで仰向けに寝て、壁に足の裏をつけて身長をレーザーで計測するんですが、股下はそのあとに測る座高を引いて計算するから、股下を短くして浮力を受けやすくするために、座高を測る瞬間に膝を曲げたり首をかがめたりしてズルをするんです。『そんなことするんだ』ってくらいです。

 その測定も、複数の人が見ているなかでやれば、そんなズルはできないと思うけど、審判がひとりで計測するので、そういうこともできてしまう。試合の時もその数値を元にしてスーツを計測するだけだから、失格になることはない。それはもうみんなわかっています。だからまず、そこを正確にすることが必要だと思います」

 試合を見ていても、着地をしてブレーキングトラックを滑ってくる時に、股下の部分にかなり余裕があるように見えるのも、そういう理由だろう。だが、胴回りや太腿、腕などは試合時の測定でも審判はチェックをするという。手でその部分を摘まみ、大きくなっているなと思うと、スーツを脱いだ状態で測定してシーズン前に測った数値と違えば失格になる。

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