新濱立也「まず視界に入っている相手を倒す」。急成長の背景は「最後の100m」と「リラックス」 (2ページ目)

  • 宮部保範●取材・文 text by Miyabe Yasunori
  • 田中 亘●撮影 photo by Tanaka Wataru

新濱が体づくりに打ち込んだトレーニング室にて新濱が体づくりに打ち込んだトレーニング室にてこの記事に関連する写真を見る

膨らんでいく周囲の期待

 大学3年の冬、新濱は平昌五輪の代表を狙って選考会に臨んだ。結果は男子500mで4位と代表には届かなかったが、トップとの差は0秒1と代表になった社会人選手3人に肉薄した。2010年バンクーバー五輪のあと、若手の台頭に飢えていた男子500mの次代を担うのではないかと、新濱への周囲の期待が膨らんでいった。

「(選考会で4位となり)平昌のあとナショナルチームに招集されました。大学4年でしたが、チームに入ってまず感じたのはメンバー同士が本当に刺激し合っているなと。いろんなタイプの選手が集まっていて、そこに(タイプの違う)自分が入った。自分にとってもチームにとっても、新たな刺激になったと思います」

 たしかに、新濱が入る以前の男子ナショナルチームは、女子チームが世界で活躍する一方で、どことなく閉塞感が漂っていた。バンクーバー五輪でふたつのメダルを獲った男子500mは、続くソチ、平昌ではメダルに届かなかった。

「ナショナルチームでは、お互いを高め合う効果があると思います。この選手は自転車が強いとか、あの選手はウェイトが強いというふうに練習メニューひとつとっても、メンバーごとに強い弱いがあって、自分の弱いところを引っ張ってもらったり自分が得意な自転車では逆に引っ張ったり」

 とりわけ自転車が好きな新濱にとって、自転車でのトレーニングを重視するオランダ人コーチ、デニス・ファンデルガン氏の率いるチームに加入できたことは、自身の能力を開花させる絶好の機会だった。

「自転車のトレーニングでは、スプリントチームでも長い時には100kmのロード、インターバル系のメニューもあれば、坂をひたすら登ったりと本当にいろんな乗り方をしていますね。中学の頃は、少年団の保護者やコーチから、1000mではバッテリー切れになってすぐに脚が止まっちゃうので、『100均電池』って言われていていたんです(笑)。なので、正直自分に1000mの才能があると考えたこともなかったんですが、ナショナルチームに入ってから、1000mでもやれるようになった。チームに入ったことによって筋持久力やミドル系の力が、一気についたと思います」

 インターバル系のトレーニングでは、6分間で急坂を登り続け、時に1500mや5000mを専門とする中長距離のメンバーと一緒に3時間半のロードへも出た。

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