ポスト野口啓代は誰だ。次々と台頭してくる五輪メダル候補の10代クライマーたち

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • 荒木優一郎●撮影 photo by Araki Yuichiro

 ポスト野口啓代に名乗りをあげるのは誰か----。

 東京五輪の銅メダルを花道に野口啓代が競技を退いてから4カ月、スポーツクライミングはすでに3年後のパリ五輪でのメダル獲得に向けて動いている。

 新型コロナウイルスの影響で中止になった国際大会に替わる場として11月22日・23日に『TOP of the TOP 2021』が東京・葛飾にて開催。パリ五輪のコンバインド種目で採用されるリードとボルダリングの2種目に、ワールドカップ日本代表選手たちが挑んだ。

久米乃ノ華/2003年12月17日生まれ/市立船橋高久米乃ノ華/2003年12月17日生まれ/市立船橋高この記事に関連する写真を見る 女子ボルダリングを制したのは18歳の森秋彩(もり・あい)。天候不順のためにノーコンテストになったリード決勝でも森は最高高度を稼いだ。

 スポーツクライミングの国内団体(JMSCA)と国際統括団体(IFSC)の解釈の齟齬によって、東京五輪の代表選考では犠牲を強いられた森。2021年のボルダリングとリードの両ジャパンカップ(JC)を制した実力を発揮し、3年後に向けてしっかりと存在感を示した。

 この森をはじめ、東京五輪・銀メダリストの野中生萌(24歳)、パリ五輪強化選手の伊藤ふたば(19歳)などが、現状ではパリ五輪の日本代表への先頭集団にいると言っていいだろう。しかし、この3選手を追う第2、第3グループにも今後の大ブレイクが期待される選手はいる。

 そんなダイヤの原石が眠る鉱脈が、森に代表される2003年生まれの黄金世代。2017年に森とともに14歳にして東京五輪強化選手に選ばれた谷井菜月(たにい・なつき)をはじめ、大いなるポテンシャルを秘める選手が少なくない。

 そのなかで今後、成長曲線が楽しみな注目株が久米乃ノ華(くめ・ののは/17歳)と青柳未愛(あおやぎ・みあ/18歳)だ。

 久米は今年の世界ユース選手権・ジュニアカテゴリーのリードで優勝、ボルダリングで5位。初めての国際大会での好結果はすばらしいが、彼女の期待値が高い理由は別にある。

 久米は中学1年から本格的にクライミングを始めたが、大会出場は高校入学からと競技経験は浅い。それでも普段通うボルダリングジムで"長物"と呼ばれる手数の多い課題をメインに取り組んだ持久力の素地によって、リードで頭角を現している。だが、伸びしろの大きさはボルダリングにあるだろう。

1 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る