【月刊・白鵬】稀勢の里との大一番。苦しかった「真相」を明かす (2ページ目)

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

 さて、この夏場所を迎えるにあたって、私にはある目標がありました。それは、幕内通算勝利数において、あと1勝と迫っていた歴代最多の魁皇関(現・浅香山親方)の記録(879勝)に並ぶことです。

 そのため、長く横綱を張っている今でも初日の取組は緊張するのですが、今場所は余計に緊張しました。それでも、小結・隠岐の海を寄り倒して勝利。魁皇関の記録に並ぶことができて、ホッとしましたね。

 翌2日目は、先場所黒星を喫した宝富士が相手でした。その分、気を引き締めていきましたよ。結果、寄り切り勝ち。この白星で幕内通算勝利数(880勝)が歴代トップとなって、私のモチベーションはますます上がっていきました。

 その勢いに乗って、中日の8日目には勝ち越しを決めることができました。そして、11日目からは大関戦がスタート。11日目に琴奨菊、12日目には豪栄道を下して12連勝としました。しかし、13日目は同じく12連勝と好調な稀勢の里が相手。厳しい戦いが予想されました。

 なにしろ、先に触れたように、稀勢の里には綱取りがかかっていました。ファンの期待も相当なものがありましたからね。

 そもそも、数年前から「横綱にもっとも近い男」と言われてきた稀勢の里。先の初場所で、琴奨菊が10年ぶりとなる日本出身力士の優勝を飾ると、稀勢の里自身にもそうした自覚が芽生えてきたようでした。それを受けて、「稀勢の里には何としても横綱になってほしい」というファンの思いもかなり強まっていました。中日を過ぎた辺りからは、その期待が一段と膨らんでいることが、周囲の我々にもはっきりとわかりました。

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