【体操】補欠からエースに。19歳、村上茉愛がリオ五輪へ急成長! (3ページ目)

  • 椎名桂子●取材・文 text by Shiina Keiko
  • 岡本範和●写真 photo by Okamoto Norikazu

 今年4月の全日本選手権では、どん底だった村上は、動きにキレがなく精彩を欠いていた。結果、ミスが相次ぎ目標としていたはずの"世界選手権代表"に入ることが難しい順位まで落ちてしまった。

 その後、日体大の瀬尾京子コーチからの叱咤激励もあり、5月のNHK杯で立て直してきて、なんとか第2補欠に入るところまで復調した。ここでの立て直し成功が、負傷者続出でピンチに陥った日本を救う世界選手権での劇的な活躍につながった。

 今大会で2種目しか出場できなかったことは、非常に悔しかっただろうが、予選の日の沈んだ表情を、決勝の日は一度も見せなかった。フロアの外にいても、1年生として自分ができる限り貢献をする、という決意の表れだったのだろう。常に笑顔で、大きな声を出して、チームを盛り上げようとしている村上の姿がそこにはあった。

 日体大のみならず、日本を背負い、引っ張っていく選手だという自覚が芽生えてきたのかもしれない。

 さらに、この決勝の日は村上にとって、日体大の4年生であり主将の鶴見の引退試合という、特別な日だった。

 今年5月にアキレス腱断裂をした鶴見は、足に負担のかかる種目ができないため、「5月の時点で引退も考えた」という。しかし、周囲の説得もあり、『日体大の主将として、この団体選手権まで段違い平行棒だけはやる』と思い直し、手術後のリハビリにも励み、1種目だけの練習を積んできた。予選では15.200という異次元のハイスコアを出し、決勝で有終の美を飾って欲しいと周囲も願っていたが、残念ながらミスが出てしまった。

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