【月刊・白鵬】予期しなかった休場が、横綱にもたらしたもの (2ページ目)

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

 振り返ってみれば、8月の夏巡業で私は、意識的に土俵に上がるようにしていました。というのも、かつて巡業を調整の場と考えて、ほどほどの稽古しかしない力士の姿が見受けられ、横綱が先頭に立って、積極的に稽古をしなければいけないと思ったからです。

 ありがたいことに相撲人気が回復して、今や地方巡業にも多くのお客さまが足を運んでくれています。そういう方々のことを思えば、なおさらです。だから私は、巡業の初日に「この夏の巡業では、積極的に土俵に上がって稽古をしよう!」と、力士たちにも檄を飛ばしました。

 ならば当然、檄を飛ばした本人が手本を見せなければいけません。私は率先して土俵に上がりました。もしかすると、それで多少オーバーワーク気味になってしまったのかもしれません。巡業の途中、蜂窩織炎(ほうかしきえん/細菌が毛穴や傷口などから入って、皮膚の深いところから化膿する炎症)にかかるなどのアクシデントもありましたしね。

 それと、15歳で宮城野部屋に入門して以来、ずっと鍛錬を重ねてきた墨田区緑の稽古場が、耐震性の問題で使用できなくなる、という事態も発生しました。おかげで、秋場所前は普段よりも出稽古に行く機会が増えました。そうやって落ち着かない日々が続いて、その気持ちのまま本場所を迎えてしまったことも、少なからず影響があったかもしれません。

 ともあれ、すべては私の自己管理不足だと思っています。秋場所を楽しみにしてくださっていたみなさんには、この場を借りて、お詫びさせていただきます。

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