【月刊・白鵬】横綱が語る、話題の逸ノ城の「本物度」 (2ページ目)

  • 武田葉月●文 text&photo by Takeda Hazuki

 大きな注目を集める中、逸ノ城の勢いは止まりませんでした。13日目には、横綱・鶴竜と対戦。稀勢の里戦と同様、立ち合いからのはたき込みを決め、新入幕にして金星まであげる快挙を達成しました。

 こうして、13日目が終わった時点で、その日に大関・豪栄道に敗れた私と、逸ノ城が1敗で並ぶ、という状況になったのです。そして翌14日目、私と逸ノ城が激突しました。

「私が、逸ノ城の盾になる!」

 逸ノ城との対戦を前にして、私の思いはそのひとつでした。それは、長らく横綱を張ってきた、私のプライドでもありました。

 逸ノ城については、私なりに分析をしていました。ここまで白星を伸ばしてこられたのは、ふたつの理由があると考えていました。

 ひとつは、身長192cm、体重199kgという恵まれた体格です。その武器を存分に生かした圧力に、多くの力士が屈していました。

 もうひとつは、対戦相手が逸ノ城の相撲を知らなかった、ということです。なにしろ、逸ノ城は昨年3月まで高校生だったんですからね。4月に社会人となって、『実業団横綱』のタイトルを獲ったのが、9月のこと。その後、幕下15枚目格付け出しで初土俵を踏んだのが、今年の初場所(1月場所)。そこから一気に幕内まで駆け上がってきた彼と、幕内力士の多くが直接肌を合わせていないのは、当然のことでもありました。

 でも私は、彼と肌を合わせた経験がありました。彼が高校時代、鳥取城北高校相撲部の土俵で、逸ノ城こと、イチンノロブくんに胸を貸して、稽古をつけていたのです。

 そのときの率直な感想は、「重たいなぁ」でした。このひと言に尽きますね。

「重たい」というのは、単に体重が思いということではなく、肌を合わせたときに、相手にずっしりと伝わる、相撲ならでは"重さ"です。その当時は、まだプロの道に進むかどうかは決まっていませんでしたが、私の頭の中には「鳥取のイチンノロブ」という存在が、完全にインプットされました。

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