【月刊・白鵬】ソチ五輪、横綱が「浅田真央イチ押し」の理由 (2ページ目)

  • 武田葉月●文 text by Takeda Hazuki

 今でも心に焼き付いているのは、スキージャンプの団体戦。日本がドイツと競った死闘です。最後までハラハラ、ドキドキしながら見ていましたが、あれはまさに岡部孝信選手、斎藤浩哉選手、原田雅彦選手、船木和喜選手の4人が、チームワークで勝ち取った金メダルだと思います。原田選手が涙を流して喜んでいるシーンは、何度見たかわかりません。以来、「ジャンプ=日本」という図式が私の中で植え付けられました。

 開会式の入場行進も、忘れられないひとコマ。何より、当時の関取衆が紋付はかまを着用し、各国の国名が入ったプラカードを持って選手団を先導する姿には目を奪われました。そして、横綱・曙関の土俵入りですね。堂々としていて、とても格好よかったです。

 思い返してみれば、私が力士や大相撲の世界に憧れを抱いていたのは、この頃だったかもしれません。あれから時を経て今、2020年に五輪が開催される日本で、私は横綱を張っています。運命的なものを感じるとともに、6年後、「五輪で土俵入り」という大いなる夢が実現できればいいなぁ、と思いを馳せています。

 さて、肝心のソチ五輪ですが、各競技で躍動する女子選手たちの活躍には目を見張るものがありますね。それも、フィギュアスケートの浅田真央選手やジャンプの高梨沙羅選手など、金メダルを狙える選手がいるということは、頼もしい限りです。

 なかでも注目しているのは、前回の2010年バンクーバー五輪で銀メダルを獲得した浅田選手です。

 なにしろ、毎年行なわれる世界選手権と違って、五輪は4年に一度のことです。選手にとって、最高の状態のときに行なわれるわけではありませんし、たとえピークの状態であっても、持っている力がそこで必ず発揮できるとも限りません。そういう意味では、五輪に出場することだけでもすごいことであって、メダルを獲得したならば、それはある種、奇跡に近いものがあるのではないかと思っています。

 1968年のメキシコ五輪で、レスリングの選手として銀メダルを獲得した私の父も、五輪の難しさ、そこに合わせて力を持続させることの大切さについて、よく話をしていました。だからこそ、私は五輪のメダルというのは、とても貴重なものだと思っています。

 浅田選手は、それほどの偉業に再び挑むわけです。五輪の出場は、今回のソチ大会が最後だと言われていますし、彼女の演技はしっかりと見届けたいと思います。

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