ソチ五輪メダル候補の15歳。
平野歩夢がスノーボードの未来を変える

  • 徳原海●文 text by Kokuhara Kai photo by AFLO

 もしかしたら、平野歩夢の活躍いかんでは、日本のスノーボードをとりまく環境、さらに言えば、スケートボードなども含めたエクストリームスポーツ全般に対する観念が劇的に変化する可能性すらある。誤解を承知で言うなら、日本はいわゆる「横ノリ」スポーツを、「競技」として伝えることに消極的なお国柄だ。代表的な例として、前出の「X GAMES」が挙げられる。ウィンタースポーツの多くが、FIS(国際スキー連盟)主催のワールドカップを五輪と並ぶ最高峰の大会と位置づけしているのに対し、スノーボードのフリースタイル各競技は、アメリカのスポーツ専門チャンネルESPNが手がける「X GAMES」のほうを重要視し、内容も格段にハイレベルだ。その現状はたしかに他のウィンタースポーツと比べて異質であるし、選手の国際的な立ち位置もイマイチわかりにくい。しかし、そんなマイナス面を考慮しても、世界中のキッズたちを熱狂させているこの大会が、日本ではNHK BSでたまに放送されるだけで、ほとんどその詳細が伝えられないのは実に寂しい。そんなスノーボードに対するメディアの消極性に、平野歩夢なら一石を投じることができるかもしれない。そう期待を寄せるスノーボード好きは、筆者だけではないはずだ。

 1998年、ハーフパイプ王者だったテリエ・ハーコンセンがボイコット(※)するなど問題の多かった長野五輪時に比べ、ショーン・ホワイトというスーパースターが本気でメダルを獲りにいったことで、五輪でのスノーボード競技のプライオリティは確実に高まってきている。X GAMESの常連ライダーたちも、今では五輪のメダルを目指して凌ぎを削るようになった。そんな中、平野はソチ五輪の目標について、こうはっきりと公言する。「ショーンを倒して、優勝したい」。技術もさることながら、大舞台になればなるほど恐るべき集中力で最高の滑りを見せるのが、「絶対王者」ショーン・ホワイトのすごいところ。五輪でそんな彼の上をいくことは、至難の業だ。しかしここ一番の勝負強さは、平野も負けてはいない。ショーンでさえ、「ひざがガクガクと震えた」というX GAMES初出場で準優勝を果たしているのだから。身長160センチの小さな体に、底知れないポテンシャルと自信、そして度胸の良さを備えた15歳――。現地2月11日、最高の舞台で最強の壁に挑む平野歩夢のチャレンジを、じっくり見届けたい。

※IOC(国際オリンピック委員会)が長野五輪への出場選手選定を、ISF(国際スノーボード連盟)ではなく、FIS(国際スキー連盟)に委託したことに抗議するためボイコットした。

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