内田嶺衣奈アナと海老原優香アナ、フィギュアスケート担当のふたりが目撃した宇野昌磨の変化 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【目撃した宇野昌磨の強さと変化】

ーー今シーズンは、宇野昌磨選手が全日本で6度目の王者になりました。おふたりが見た彼の強さの秘密とは?

内田 私は初めて取材させてもらったスケーターが、宇野選手でした。たしか9シーズン前、ジュニアからシニアに上がるころ取材して、変化を見てきたと思っている選手ですね。そんな宇野選手の強さは、本番に至る過程のところ、「これまでの練習の積み上げに後悔がない」と言いきれるところかなと思います。

 結果がどうあれ、そこまでの自分の歩みに後悔がないから、"もう、それでいい"っていうスタンスをとれるんだと思います。そこまで言いきれる選手ってなかなかいないんじゃないかなって。宇野選手の経験や性格もあると思うんですが、後悔のない練習を積めて、そこに確固たる自信を持っているところが強さなんじゃないかと。

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海老原 宇野選手は今シーズン、「自己満足」をテーマに掲げていて。だからこそ後悔がない日々を送ってきて、「どんな結果も受け止められる」ともおっしゃっていました。ステファン・ランビエルコーチの存在がモチベーションになっていて、「ステファンが喜んでくれるから、頑張れるんだ」と。そういうところで、自分でもっと表現を磨きたいというのが魅力であり、強さで。それは自己探求欲って言うんですかね。

ーー宇野選手は今シーズンのフリー『Timelapse』に象徴されるように、最高難度の曲で表現の成長をしていました。彼の自己探求、挑戦心はすさまじいです。

内田 フィギュアスケーターは、今までのイメージを変えたいって、次のシーズンに挑む選手が多い印象です。何かしら自分の引き出しを増やしていけるプログラムで、挑戦する部分が組み込まれているものをやって、スケーターとしてオールマイティになっていきたいというふうになると思うんですが、宇野選手はまさにそういう選手。

 これまでも宇野選手は、樋口美穂子先生に教わってプログラムをつくっていた時のイメージから、そこを離れてひとりで挑んだシーズン、すごくアップテンポの曲をやったり、それからステファンコーチと組んで王道的な曲をやったり、いろいろ挑戦している印象です。ただ、本人は難しすぎてできないとはならないし、何より、ステファンコーチが求めるものをプログラムとして体現したいという純粋な気持ちでフィギュアスケートと向き合っている印象があります。

海老原 宇野選手は、誰かと比較するのではなく、自分と対峙した時、過去の自分よりもこういうことができている自分でありたいという目線で取り組んでいるように映ります。何を一番に求めるのか......もちろん、競技は誰かと競うんですけど、自分のなかで、これを達成したいという目標があって、あくまで自分自身との戦いに重きを置いている選手ですよね。「自己満足」というテーマも、そういう意味で発言しているんじゃないかと思いました。

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内田 宇野選手は、いつもお話を聞くたび、想定していない答えが返ってくるので、インタビューしていて楽しい選手です! 宇野選手ならではの世界観というか、そこに嘘がなくて。最近、こういう目線を持つようになったんだと思ったのは、これまでは自分にフォーカスした発言が多かったのが、「大会を盛り上げる一員でありたい」「お客さんが応援してくれる、ワクワクしてくれる大会をつくり上げたいから、そのパーツとしていい演技をしたい」というふうに変りました。

 フィギュア界全体を見ている発言で、試合の盛り上がりやフィギュアスケート人気に意識がいっているんだろうなって。スケーター歴が長くなってきたベテランだからこその、発言の変化なのかなと感じています。

中編<鍵山優真復活の舞台裏 内田嶺衣奈アナと海老原優香アナがフィギュアスケートを語らう>を読む

後編<坂本花織は「オーラがある」「強さを感じる」 内田嶺衣奈アナと海老原優香アナがなりたいスケーターは?>を読む

【プロフィール】
内田嶺衣奈 うちだ・れいな 
1990年、東京都生まれ。上智大学卒業後、2013年フジテレビに入社。現在はフィギュアスケート中継のほか、『プライムオンラインTODAY』(BSフジ)メインキャスターなどを担当。趣味は料理と旅行、特技はフランス語。

海老原優香 えびはら・ゆか 
1994年、東京都生まれ。学習院大学卒業後、2017年フジテレビに入社。2023年からフィギュアスケート中継を担当。『Live News α』金曜メインキャスターなども務める。趣味はゴルフで、番組でついたあだ名は「ブンブン丸」。

プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。

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