高橋大輔に長光歌子が伝えた「日本人として恥ずかしくないマナー」 アジア初の偉業を回顧 (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki

【現役引退を「え? 私、聞いてない」】

ーー2023年4月の世界国別対抗戦で、高橋さんは競技生活を引退しました。最後の舞台で臨時コーチとしてリンクサイドに入って、感無量だったと思います。

 もしかしたら最後かも、とは予感していました。「国別、先生に(コーチとしてリンクサイドに)立ってほしい」って連絡が来たので、「やっぱり、やめるんだな」と。

 初めて世界選手権のメダルをとれた東京体育館で、それも当時と同じ『オペラ座の怪人』をやるなんて......いつもなら私、「そんなんようせん」って断るんですが、シチュエーションはそろっていたので、何も言わず「うん、行く」って返事して。ふたりの阿吽の呼吸だったんですけど......じつは引退の報告は最後まで受けていなくて。

 国別のあと、みんなでご飯を食べに行って、ビデオ撮影をしていて「大輔さんは引退ですが、どうですか?」って聞いてくるから、「え? 私、聞いてない」って。そこで大輔がハッとなって、「言ってなかったっけ?」って。「聞いてません」って(笑)。すごく和やかで、最後までとても優しい雰囲気でした。

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【プロフィール】
長光歌子 ながみつ・うたこ 
1951年、兵庫県生まれ。自身の現役時代には、全日本ジュニア優勝、全日本選手権6位など活躍。引退後はコーチ兼振付師として活動し、数多くのトップ選手を育てる。バンクーバー五輪銅メダルの高橋大輔が中学時代からコーチを務めた。

プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。

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