高橋大輔のパイオニアとしての熱量がほとばしる アイスショー『滑走屋』に込めた思い (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【フィギュアスケートは「独特なスポーツ」】

 高橋はシングルスケーターとして、日本の男子フィギュアスケート界の新時代をつくっている。五輪でのメダル、グランプリ(GP)ファイナル、世界選手権の優勝と、アジアですべて初の快挙を成し遂げた。

 引退から4年後、歓喜の現役復帰で全日本選手権2位。何歳でも現役であり続けられる姿を示し、固定概念を打ちこわした。さらにアイスダンスへ転向。村元哉中とのカップルで3シーズン目に全日本を優勝し、世界選手権でもトップ10に迫る11位に輝いた。

 現役時代、彼は氷上であらゆる壁を取っ払ってきた。引退後も表現者として新たな試みに挑む。『滑走屋』はそのひとつだ。

「僕自身、アイスショーとかエンタメ作品に出させてもらってきたんですが、フィギュアスケートは現役でありながら、アスリートとしてショーにも出られる独特なスポーツだと思うんです。でも、これからの氷上でのエンタメを続けるには、新しい形をつくっていかないといけない。なぜなら、エンタメは進化し続けているので。スケーターも変化を求めていく必要があるでしょう」

 高橋は、そう言って先駆者の使命感をにじませた。現状維持は衰退を意味する。そこで新基軸を打ち出すため、劇団四季などミュージカル、ダンス、舞台で振付師や演出家で活動する鈴木ゆまとタッグを組んだ。

「ゆまさんに陸での振り付けをお願いしたのは、舞台を見させてもらって、構造や体の使い方に感動して。これを氷の上で見せられたら面白いなって思いました。ダンスの世界は大人数で合わせてバシッとそろえられるんですが、スケートでこれを感じたいなって。

 スケーターはカウントをとるのが難しいところはあるんですが、カウントでとる音楽の先にある音楽の発見がありました。僕もとれていないので、めちゃくちゃ言われるんですが(笑)。みんなも表現のところを持ち帰ってくれたら、踊るテクニック、魅せる表現が上がるんじゃないかって思っています」

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