鍵山優真は予想外の転倒がなければ...全日本で見せたマリニンに迫る可能性 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【激戦が生んだ完璧な演技】

 失敗があったからこそ、12月23日のフリーは冷静になれた。

「ショートより緊張しなかったし、自我を保ちながら会場の雰囲気に飲み込まれないように、落ち着いてできたと思います」

 表彰台争いが最終組の6人の激しい競り合いになるなか、気持ちは高揚した。

「僕もそうだったけど、みんなこの試合に100%の調子を持ってきている感じ。本当に、僕が予想しているよりもハイレベルですごい試合になった。僕も、去年の悔しさがありながら思いきり演技ができたのはよかったです」

 他の選手が3本以上の4回転ジャンプを組み込んでいるなか、鍵山はサルコウとトーループの2本だけ。他の選手より完成度を高めなくてはいけない立場だった。

「僕がどんな構成で臨んだとしても、今日に限っては絶対にパーフェクトな演技をしなければならないっていう思いがありました。みんながパーフェクトな演技をしていくなか、僕もそういう思いがすごく強かった。自分の構成がどうだというのはあまり深く考えず、結果も気にしてはいなかった。とにかく全部やりきろうという思いだけで臨んでいたし、自分の演技だけに集中して、他のことは考えなかった」

 結果は、すべての要素で高いGOE(出来ばえ点)加点をもらい、スピンとステップもレベル4にする完璧な演技。4回転4本の構成だった2022年北京五輪フリーの201.93点にも迫る198.16点を出し、SP首位の宇野昌磨にも4.81点差をつけた。鍵山はフリーでは1位の得点で、合計292.10点、総合2位とした。

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