山本草太「諦めにも近い日々」を越えて...激戦の全日本フィギュア男子で初表彰台「10回目で報われた」 (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【ガッツポーズの初表彰台】

 フリーは『エクソジェネシス交響曲第3番』でピアノの音を丁寧に拾いながら、静かに立ち上る情感を全身で現した。冒頭に4回転サルコウを決めると、ゾーンに入った。

「前半がカギになるかな、とは思っていました。こっちに来てから、サルコウがショート、フリーともに不安要素だったんです。でも、6分間練習から調整することができて、サルコウを降りてからは余裕を持って演技ができたかな、と」

 山本は言う。プログラム前半の終わり、トリプルアクセル+オイラー+3回転サルコウを成功すると、ガッツポーズも出た。

「前半の4つ目のジャンプが終わって、(ガッツポーズは)うれしい気持ちと鼓舞する気持ちと両方で。まだ前半なのに、これでミスれないぞって自分に言い聞かせながらやっていました(笑)」

 2つ目のアクセルも成功させ、再び拳をつくる。ボーカルが曲を盛り上げるのに合わせ、激情を高めた。そして最後の3回転ルッツを降りると、3度目のガッツポーズ。演技後、たかぶった双眸(そうぼう)は潤んでいた。

「目がしょぼしょぼしたのか、感動して出たのかわからないですけど、涙は出ていましたね(笑)。調子は山あり谷ありで、苦しい日々のほうが多かったんですけど、この全日本まで頑張ってよかったなって」

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