島田麻央は坂本花織に全日本で勝てるか? 優勝争いを予想・考察してみた (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 田中宣明●撮影 photo by Tanaka Nobuaki

【女王・坂本花織に勝つための条件】

 4位発進だった昨年の全日本SPでは、島田はトリプルアクセルの挑戦を回避。大技2本の練習での成功率はまだ4割ほどだというが、トリプルアクセルはジュニアGP日本大会と全日本ジュニアでも成功していて、GPファイナルでもしっかりと着氷しているだけに、全日本SPでも気負いさえなければ成功する確率は高いだろう。

 今回の全日本でトリプルアクセルも含めてノーミスの滑りができれば、自己最高の73.78点をベースと計算すると、78点台に乗せられることになり、女王の坂本花織にプレッシャーをかけられる。

 さらにフリーでも、大技2本に加え他もノーミスできれば、GPファイナルのフリーをベースにステップシークエンスの得点を加算すれば、150点台に乗せられる。すると合計220点台後半にまで伸ばせて、坂本のシーズンベストに肩を並べられるまでになって優勝争いも繰り広げられる。

 その得点を現実にするためには、まずSPで坂本を上回るか、僅差に持ち込む必要がある。だが、演技構成点は、島田の自己最高得点と坂本のGPファイナルの得点と比較すると、SPは4.03点で、フリーは5.33点の差があり、合計は島田が9.36点低い。

 加えて、演技構成点やGOE(出来ばえ点)は相対評価の部分もあるため、同じ試合で滑った場合、ジャッジの評価はジュニアの試合より抑えられ、得点差が大きくなる可能性も考えられる。そうすると、島田が坂本を上回るためには、SPのトリプルアクセルとフリーのトリプルアクセル、4回転トーループを確実に決めるノーミスの滑りをしなければいけない。

 坂本の自己最高得点はSP、フリー、合計のいずれも2022年世界選手権で出したもの。坂本は追い込まれれば追い込まれるほど底力を出せる選手だ。彼女がそんな持ち味を存分に発揮して236.09点の自己ベストを上回ることになったら、島田がそれを超えるのは厳しいだろう。

 だが、坂本がどこかでミスをしたり、220点台にとどまるような展開になれば、島田にも優勝のチャンスは生まれてくる。島田が全日本の緊張感に襲われず、どこまで自分らしい演技を貫き通すことができるか。全日本選手権の大きな見どころになってくる。

プロフィール

  • 折山淑美

    折山淑美 (おりやま・としみ)

    スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。

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