高橋大輔も注目する若手ペア 長岡柚奈・森口澄士「ゆなすみ」の将来性に期待 (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【雰囲気に飲まれた初の大舞台】

 11月25日のフリースケーティング、ゆなすみは堂々とリンクに立っている。緊張がなかったはずはない。

「ショートで失敗してしまい、自分の不甲斐なさを感じていました。それでネガティブな方向に行ってしまいそうになったんですが、ブライアン(・シェイルズ)コーチから、『あなたはスロー(ジャンプ)を跳べるし、サイドバイサイドもきれいなものを見せられる。明日はジャッジや観客にそれを見せなさい。せっかく持っているんだから』と言っていただいて、ポジティブに切り替えられました」

 長岡はそう振り返って、こう続けた。

「ショートのミスは初の国際舞台で、雰囲気にのまれてしまったんだと思います。でも、私はこの雰囲気が好きなので、実戦にどう活かしたらいいか、を考えました」

 映画曲『Space Table Symphony』でふたりはツイストに成功。そして、サイドバイサイドも、3回転ルッツ+ダブルアクセル+ダブルアクセルを鮮やかに決めた。リフトも成功し、SPで失敗したスロージャンプも倒れずに踏ん張った。デススパイラルはノーバリュー、リフトは消耗を感じさせたが、最後のペアコンビネーションスピンにつなげたのは、冒頭に記したとおりだ。

 フリーは90.03点で8位。総合135.39点で8位と、世界との差は大きい。しかし、今は海外トップ選手を間近に見て、アップの仕方から学んでいるところだ。

昨季、年間グランドスラムを達成した三浦璃来・木原龍一ペア昨季、年間グランドスラムを達成した三浦璃来・木原龍一ペアこの記事に関連する写真を見る 長岡は、りくりゅうの三浦から「頑張ってね!」と励ましのメッセージを受け取っていたという。東日本選手権で調子が上がらずに落ち込んでいた時も、「私たちも初戦はボロボロだったから大丈夫だよ」と言われ、心がラクになった。それが今大会の健闘につながったか。

「(ペアの)トライアウトを受けた時は、ペアをやりたくて受けたんですが、ペアがどんなものか知る機会くらいにも思っていて、組むことはできないだろうと思っていました。それが組むことができてNHK杯に出場できているなんて、想像もしていなかったです」

 長岡は心境をそう明かしている。

 ペアとしての挑戦は始まったばかり。「将来性」だけは濃厚に感じさせた。目標はオリンピック出場だ。

「また、こういう舞台に戻ってきたい」

 ふたりは言う。それを待ち望む人がいるはずだ。

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プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。

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