鍵山優真が宇野昌磨を破ってNHK杯制覇 進化した「表現力」を武器に、GPファイナルで「トップ3」に挑む (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【まったく違うものを見ているよう】

 フリーでは、直前に滑った宇野が、4回転4本の構成を流れのある演技で滑りきり、合計を286.55点とした。そのあとに登場した鍵山は、4回転はサルコウとトーループ1本ずつ。フランス杯のフリーではトリプルアクセルのミスと終盤の3回転ルッツの着氷の乱れで175.23点だったが、同じようなミスをしてしまえば宇野の得点に届かない。そんな緊張感があった。

「気持ちの準備はすごくできていて、何も悪いと思う部分はなく、前半は落ち着いていけました」と鍵山。冒頭の4回転サルコウは、練習で見せていたように軽やかに跳び、SPより高い4.30点の加点をもらった。

 そのあとの4回転トーループからの3連続ジャンプは、最後のサルコウが2回転になるミスはあったが、流れを途絶えさせず、つなぎの振付けもしっかりと意識されていた。

 だが、演技後半に入って2本目のトリプルアクセルで転倒するミスが出た。

「アクセルのミスはあらためて映像を見返したいけど、技術的なことで、体の滑る方向と足を出す方向がちょっとズレてしまったのが原因かなと感じています。でも、そのあと落ち着いて対処できたので、悪くなかったんじゃないかと思います」

 トリプルアクセルの次の3回転ルッツ+2回転トーループを冷静に決めると、以降の滑りは集中力を見せた。コレオシークエンスとステップシークエンス、そして終盤の2回のコンビネーションスピンは、ジャッジのほとんどがGOE(出来ばえ点)加点で4〜5点をつける高い完成度。とくにステップシークエンスは、昨季と同じプログラムにもかかわらずまったく違うものを見ているような印象すらあった。

「今年3月に復帰してからは、表現力だったりステップだったり、そのあたりを重点的に練習してきた。その積み重ねでしっかり成果を出せたというのがひとつの収穫だと思います。気持ち的にも昨季と違って不安な要素がいっさいなくて、ジャンプや表現、すべてを意識できている。そういうところは全然違うと思います」

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