羽生結弦も浅田真央も...ゼロからスター選手を生み出してきた、日本フィギュアスケート界、名伯楽たちの系譜 (3ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • photo by Yohei Osada/AFLO SPORT

【次世代のコーチも次々に誕生】

 その後、小岩井久美子、恩田美栄、中野友加里、浅田舞・真央姉妹、村上佳菜子ら、日本女子のエースとなるトップ選手を次々と育成。男子では宇野昌磨を育てたことでも知られている。

 その門下生には、伊藤の後継者としてトリプルアクセルを跳ぶ選手が次々と誕生した。恩田も中野もトリプルアクセルに挑戦。伊藤に次ぐ完成型のトリプルアクセルを習得して武器とした浅田真央を世界トップ選手にまで育て上げて、次のステージ(段階、レベル)に送り出した。

 ジャンプ指導に抜群の実績がありながらも、山田コーチは「ジャンプの好きな子が集まってきたから」と謙虚だ。スケート技術の指導以上に人間性やしつけを重視しており、親を積極的に練習に参加させるなど、「スケートが大好きな子どもたちを増やしたい」というのが指導方針。フィギュアスケートをやりたくなる環境づくりと普及活動に軸足を置いているという。
 
 普及型コーチとして「(名古屋で)フィギュア競技の底辺拡大」をライフワークにして取り組んでおり、コーチと選手との関係も単なる上下関係ではなく、家族的な雰囲気がある。「山田ファミリー」と呼ばれる所以だろう。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                      
 今回紹介した3人のコーチ以外にも、日本には五輪メダリストや世界を舞台に活躍する選手を輩出している指導者は数多い。バンクーバー五輪銅メダルの高橋大輔を長年指導した長光歌子コーチ、北京五輪銅メダルの坂本花織を育て上げた中野園子コーチ、平昌五輪4位の宮原知子を指導した濱田美栄コーチ......といった60代、70代のコーチが、指導現場の中心を担っている。

 さらにそれに続いて、中庭健介、横谷花絵、恩田美栄、本田武史といった40代の次世代コーチたちが、指導の第一線に立っている。伝統を引き継ぎながら、新たなチャレンジに挑む彼ら、彼女らが屋台骨を担っていくことで、日本のフィギュア界はさらに発展を遂げていくことになるだろう。

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