羽生結弦が「もう滑りたくないと思っていたプログラム」をスターズ・オン・アイスで選んだ理由 裏舞台では他の出演者を気遣う姿も (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

●「もう滑りたくないプログラムだった」

「この『オペラ座の怪人』は2014−2015シーズンにやっていて、中国杯での衝突事故とか、自分が病気やケガにすごく苦しんだシーズンのプログラム。長い期間、自分でもうこれは滑りたくないと思って、ある意味、封印をしてきました。

 あれ以来、初めて東京ドーム公演で滑らせていただいた時、このプログラムをもっと完成させたものを、もっと体力のある状態で、しっかり滑りきれる状態でみなさんにお届けしたいな、と考えました。それで、このプログラムを滑ることを決めました。

この記事に関連する写真を見る また、『スターズ(・オン・アイス)』の会場となったこのリンクでは、僕自身、衝突事故の直後に滑っていて。その時は、事故の影響も少なからずあってうまく滑ることができなかったので、そういう意味でもこの会場でいい演技をできたらいいなと思って滑っています」

 ソチ五輪王者として臨んだ2014−2015シーズン、羽生は男子フィギュアスケートの牽引者としてフリーでの4回転ジャンプを3本とし、うち1本を得点が高い演技の後半に入れようとしていた。

 その練習も兼ねてショートプログラム(SP)でも、後半に4回転トーループを入れる構成にしていた。

 だが、シーズン初戦のグランプリ(GP)シリーズ・中国杯のフリー前の6分間練習で、ハン・ヤン(中国)と激突。頭部や腹部、太ももの挫創に加え、右足首をねんざ。合計10針を縫うケガを負いながらも強行出場して2位になった。

 その3週間後のNHK杯が、今回のアイスショーの会場だった。後半の4回転トーループを封印したプログラムで臨んだが、最初の4回転サルコウが2回転になり、次の4回転トーループは3回転になって転倒。ミスを連発し、中国杯より得点を落とす229.80点で4位にとどまったのだ。

 結局、そのシーズンはSP、フリーともに後半の4回転は封印し、実現できなかった。

 それを今、この会場で再現させる、ステップシークエンスのあとの4回転トーループ+3回転トーループだった。8年半が経ってようやく見せることができた、『ファントム』の後半の滑りだ。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る