坂本花織がミスのあとで見せた4年前からの成長 世界選手権連覇を果たし「嬉しいけど悔しいな」 (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【経験を積んだからこその3回転トーループ】

 基礎点が1.1倍となる後半最初の連続ジャンプで失敗。フリップ+トーループの連続3回転の予定が、1本目の3回転がパンク(回転が抜ける)して1回転になる痛恨のミスを犯した。

 坂本は、同じさいたまスーパーアリーナで開催された4年前の世界選手権で、SPで2位発進しながら、今回と全く同じような失敗をしたうえ、2本目のジャンプは跳ぶことができなかったために、総合5位に終わっていた。

 しかし、今回はここからが現世界女王の真骨頂だった。4年前のリベンジをすることが今大会に向けた大きな目標だっただけに、今回だけは同じ過ちを犯さなかった。フリップが1回転となったあとの2本目で、3回転トーループを成功させた。シニアに転向したこの6年間、さまざまな経験を積んできたからこそ「成功させることができた」と胸を張る22歳がそこにいた。

「(ジャンプの失敗は)何があったのかわからない。特に(世界選手権で)4年前にミスしたからという考えもなく、普通に走っていただけなんですけど、何かふわーっという感じで......。緊張はずっとしていました。キス&クライではSPの差がどう縮まってしまうか、焦りました。

 今回のフリーは、本来であればノーミスにして笑顔で終わりたかったんですけど、4年前の世界選手権フリーと同じミスをしてしまって、すごく悔しかったです。だけど、何とかその後は落ち着いて、連続ジャンプの3回転をつけたりとか、リカバリーをしっかりできたりとかして、そこは4年前より成長したかなと思いました」

 いつも演技について辛口に評価する中野園子コーチは、坂本の失敗と連覇について聞かれると、開口一番、逆質問してきた。

「どうしましょう? 来年は課題が残ったので、きっちりやってくれるでしょう。SPを頑張ったから、目標の大会2連覇につながったと思います。今日(フリー)はスピードをもう少し出してほしかった。練習をしっかりしてきたので、こんな失敗は見たことがなかった。ただ、3回転トーループをとっさにちゃんと跳んで決めたのは偉かったです」

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