「羽生結弦くんが言っていたように、プロ活動にはいろんな形があっていい」。日本女子の第一人者、佐藤有香さんが「プロの世界」を語る (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha

【競技の世界からプロの世界へ】

 このようなことが当たり前ではなかった時代を生きてきた有香さんは、後輩スケーターたちに、現状に甘んじることなく、滑れることがどれだけ幸せなことかを謙虚に受け止め、1公演1公演に取り組んでもらいたいという。

「スポーツである限り、ずっと滑れることはないので、与えられた短い時間を大切してほしいです。『いろんな形でフィギュアスケートは楽しめるんだよ』、『こういう(アイスショーなど楽しい)場所もあるんだよ』ということを紹介したいし、ひとりでも多くの人にスケートを見てもらいたいし、スケートを滑ることがいつもずっと身近にあってほしいです」
 
 有香さんがこれまで長く続けてきたプロスケーターとはどういうものなのかを尋ねたところ、無音のスケーティングを追求する開拓者らしい答えが返ってきた。

「プロスケーターというのは、氷上の俳優とかミュージシャンとかのカテゴリーだと思っています。そして、そこにつけ足して『プロアスリート』です。羽生(結弦)くんが言っていたように、プロ活動にはいろんな形があってよくて、最終的に自分が決められるんですよね。決定権は自分にあって、どのような形で自分を見せたいかとか、どんなことをチャレンジしていきたいか、どんな部分を伸ばしたいかというのは、時期によってその都度変わっていいと思っています。

 スピード感を使いながらも演技ができたり、アクターのように曲を演じたり、個人的感覚としてはエッジさばきがミュージシャンにとってのひとつの楽器になるような感じになることがあります。みんなそれぞれ違うと思いますので、バラエティーに富んだたくさんの道があっていいと思います。ルールに縛られず、思うがままに見せられるのがフィギュアスケートです。

 国際スケート連盟(ISU)が決めるルールの枠のなかで、現役選手はテクニック的にも体力的にも精神的にも自らの限界まで追い込む非常に厳しい競技の世界ですが、そこで学んだテクニックや表現力を生かすことができるプロという次の段階で進化していった時には、すごく美しいものが作品として出来上がると思っています」

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