坂本花織がGPファイナルで味わった天国と地獄。ワースト記録に「もうこれっきりにしたい」 (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • photo by Joosep Martinson - ISU via Getty Images

【今季一番の出来だったSP】

「今日のショートでは3+3回転が決まったのがよかったなというのが第一で、久しぶりにショートがきれいにまとまったのが一番です。今シーズン初めてと言っていいくらいの出来だったので、ひとまずほっとしています。

 ファイナルまでの練習期間で、内容は変わらずですけど、トレーニングの量をちょっとずつ増やしたりとか、どうしても車移動が多くなってしまうので、時間に余裕がある時は歩いたりとか電車を使ったりとか、とにかく体を日常でも意識的に動かすことをして、何とか体の動きを取り戻したのかなという気がします」

 今季のSPは、新しい振付師のロヒーン・ワード氏が手掛け、ジャネット・ジャクソンが歌う曲をメドレーで使った『Rock with U/Feedback』。22歳の坂本自身も「大人っぽく、色っぽく演技したい」という新たな一面を見せる振り付けになっている。すでに報じられているように、スケートアメリカを初制覇した直後、そのジャネットが彼女自身のインタグラムに坂本の演技に対して「カオリ、とっても素敵だったわ! アメリカ大会優勝、おめでとう」とコメントした。

 会心の演技を披露した今回のSP後、そのことについて聞かれた坂本は「まさかジャネット・ジャクソンさん本人に認識してもらえると思っていなくて、もうびっくりしすぎて、一瞬パニックを起こしました(笑)」と笑顔で答えていた。

 今季はプログラム後半の3回転フリップ+3回転トーループの連続ジャンプでミスすることが続いていたが、ファイナルでは「ジャンプ前のスピン2つでいつもは体力が尽きてしまうんですけど、今日はスピンが終わっていた時点で結構、落ち着いていたので『あっ、いけるかも』と思って、そのまま波に乗った感じです」と言う。

「まだまだスピンの取りこぼしがあったので、伸びしろしかないなと感じたし、この(SPの)プログラムは"魅せるプログラム"だと思うので、もっとレベルアップできたらなと思います」

 これでやっと調子も気持ちも上向いてきたかと思われたが、フリーの演技は内容も結果も誰も予想していないものとなった。演技後の坂本は茫然自失。キスアンドクライでは気もそぞろの様子で、隣に座った中野コーチから注意されていたほどだ。

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