宇野昌磨がNHK杯SPで見せた「スケート人生の賜物」。その裏には「完璧を求めすぎるな」というコーチの言葉があった (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

原点を思い出させたコーチの言葉

 その日、宇野はレストランでランビエルコーチと話し込んでいる。「時間ある?」と誘われたのは初めてのことだったという。それだけ切迫した様子だったのだろう。

「完璧を求めすぎるな。一つひとつやった先に、それは待っている。目指すものではない」

 宇野はランビエルにはっきりとそう言われて、再びスケートに向き合えるようになったという。実は靴の調整がうまくいかず、万全ではない焦りもあった。どうしようもできないことをわかっていながらも、思い悩んでいた。

「毎回、完璧な状態で望めるわけではない」

 そう諭されると、ようやく腹をくくることができた。

「一昨年、昨年とずっと積み上げてきた基準を下げたくなかったんです。それで、イライラとしていました。でもステファンが言ってくれたように、今日までやってきたことをちゃんとやろうって」

 王者は原点に戻った。

ステファン・ランビエルコーチ(右)と言葉を交わす宇野ステファン・ランビエルコーチ(右)と言葉を交わす宇野この記事に関連する写真を見る

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