日本人選手には有利に? 国際審判員に聞く、スピンや連続ジャンプのルール改正のポイント

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直/JMPA●撮影 photo by Noto Sunao/JMPA

吉岡伸彦氏に聞くフィギュアスケートのルール改正(後編) 前編を読む>>

 2026年ミラノ・コルティナダンペツォ五輪に向けて歩み始めたフィギュアスケート。今回はシニア転向の年齢制限の引き上げ以外にも、「ステップとスピン」「コンポーネンツの項目」「ジャンプシークエンスの定義」などで若干のルールの変更があった。その狙いは何か。そしてルール変更は選手たちにどのような影響を与えるのか。千葉大学国際教養学部教授でフィギュアスケート国際審判員、元日本スケート連盟フィギュア強化部長の吉岡伸彦さんに聞いた。

アクセルジャンプを得意とする宇野昌磨。ルール改正は有利に働くのかアクセルジャンプを得意とする宇野昌磨。ルール改正は有利に働くのかこの記事に関連する写真を見る 北京五輪後に行なわれたルール変更は、多くのトップ選手がスピンとステップのレベル4をとれるようになってきたことを受けて、少しレベルをとりにくくして、上手な選手とそうでない選手との差別化を図る目的があります。

 たとえばステップシークエンスでは、「難しいターンの3連続」を左右それぞれで行なうなかで、5種類の難しいターンの全部の種類を含まなければいけないとなっています。ですから苦手なターン(種類)がある選手は、そこでレベルをとりこぼすことになり、ごまかしがきかなくなってしまう。明らかにステップのレベルがとりにくくなっていくでしょう。ただし、一般のファンの方からすると、「ちょっと変わったよね」と見えることはなく、「とるのが難しくなったんだって」「へえ、そうなんだ。見ててもわからないよね」という感じだと思います。

 スピンでは、今までは、何でもいいから要件の特徴が4つあればレベル4と判定されたのですが、ルール変更後は、レベル4にするために必須の要件特徴6つ(1同一の足での難しい姿勢変更、2難しい出方、3明確なエッジ変更、4双方向の回転、5明確な回転速度の増加、6難しいフライングの入り方)を定め、そのどれかが必ず含まれなければいけないことになりました。その6つをうまく3つのスピンのなかで組み込んでいくことができない選手は、どれかひとつかふたつはレベル3までしかとれないということが起こります。

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