本田武史が五輪シーズンの女子フィギュア界を分析。ロシア勢は「誰が思いついたんだ、というレベルのことを始めている」 (3ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • photo by AP/AFLO

 今季に関して言えば、トップ争いに顔を出していく日本の選手たちは、いまできることをミスなく滑りきるということが絶対条件になってくると思います。

 そんななかで、坂本花織選手は完成度の高い演技で勝負に挑める強みを持っています。トリプルアクセルや4回転ジャンプの練習をしているのも見たことはありますが、今からそれらをプログラムに入れるという選択肢はないと思います。坂本選手に限らず、それをプログラムに入れた時に他のジャンプにどう影響するかという問題がありますし、精神的な面で不安のない状態に持っていかなければいけないという課題もあります。

 坂本選手の武器はスケーティングスピードで、あの迫力のあるジャンプというのは誰も真似できない彼女の個性であり、ジャッジからも高く評価されるところだとは思うので、そこを最大限に生かすことが大事です、SPからミスを出さずに高いGOE加点を稼ぎ、確実に点数をとることが必要になると思います。その部分を改善していくことによって、もっと点数を上げていくことは可能だと思います。

 4年前に平昌五輪代表入りをあと一歩のところで逃した樋口新葉選手は今季、SP、フリーともにすごく印象的なプログラムになっています。フリー『ライオンキング』は迫力も勢いもあって、ジャンプが決まるごとに曲に乗って感情が高まってくるようなプログラムになっていて、これは今季の強みになると思います。

 また、ついにフリーにトリプルアクセルを組み込むことができるようになったことは、代表選考レースにおいては大いにプラスになるはずです。彼女のトリプルアクセルは高さがあって力強い。シーズン後半に向けて、SPから入れてくるのか、フリーだけにするのかという戦略も、これからの勝負のところで変わってくると思いますね。

 また、若手の筆頭でシニアデビューを飾った松生理乃選手は、ジャンプがすごく安定しています。伊藤みどりさんや浅田真央さんらを育てた山田満知子先生の指導を受けていますから、トリプルアクセルの伝統を受け継いできているところもあるのでしょう。安定感のある松生選手を、他の選手たちは脅威に感じるかもしれません。

 大技を跳ぶロシア女子の勢いは防ぎようがないですが、そんななかでも、選手それぞれの個性をしっかり出すことによって、見ている人に「このプログラムはすごかった」と感動してもらうことが、どの選手にとっても必要なことではないかと思います。


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