「得点だけではない」。
羽生結弦が世界最高のその先に目指すもの

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●写真 photo by Noto Sunao

「直前の6分間練習でもジャンプに不安要素が出てしまい、それを修正できないまま練習が終わってしまった。それにプラスして、最初のパトリック(・チャン)選手の演技がよかったということが観客の大歓声でわかっていましたし、そのあとの宇野(昌磨)選手の演技がよかったことも歓声が聞こえてきましたから。極めつけは、自分の前のハビエル(・フェルナンデス)が200点超えで『やばいな......』と。自分で自分を追い込んだところもありましたが、NHK杯の前にたくさん練習できて、そのあともしっかり練習してきたので、何とかなったのだと思います。演技の途中で徐々に不安はなくなってきましたけど、明確な記憶としてあるのは、前半の4回転トーループを跳んだ時に少しホッとしたことだけです」

 羽生自身、「いっぱいいっぱいだった」というフリーの演技。NHK杯ではGOE(出来ばえ点)満点の3点加算はトリプルアクセル+2回転トーループだけだったが、今回は最初の4回転サルコウと4回転トーループもGOEは満点で、技術点を120・92点にした。そして、演技構成点は9名のジャッジが10点満点をつけた項目は23。合計で98・56点を獲得した。この結果、歴代最高の219・48点を獲得し、合計も330・43点と他の追随を許さない得点をたたき出した。

「ここへ来るまで、本当にたくさんの方が調整のペースやピークを考えてくださった。もちろん、僕自身もここに入る前からしっかり考えてやって、フリーにピークを合わせようという狙いがありました。練習はそれほどよくなかったので、それがしっかりできたかどうかはわからないです。でも、自分で考えて練習をしてきたという自信はあったので、それは出せたかと思います」

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