羽生結弦の事故を教訓に、今すべきこととは?

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao

 第5滑走者として登場した羽生の演技内容は厳しいものになった。最初の4回転サルコウと続く4回転トーループで転倒。続く3回転フリップはキッチリと決めて、スピンとステップはスピードを抑えて丁寧にこなし、後半に入ると最初の4回転トーループ+2回転トーループを3回転ルッツ+2回転トーループに変更。確実性を優先する冷静さを見せたが、気力も体力も尽きかけていた。

 トリプルアクセルで転倒した後のトリプルアクセル+1回転ループ+3回転サルコウは意地で決めたものの、その後は3回転ループと3回転ルッツで転倒。スピードもガクンと落ちてしまった。それでも何とか4分半のフリーを滑り切って、最後はフラフラになってリンクから上がった羽生。その姿から、ギリギリの状態だったことがうかがえた。

「ペナルティーをもらってもいいからキス&クライとメディア対応はスキップしようとブライアンと話し合って決めていたんです。でも、羽生選手はいつもどおりキス&クライの方に向かったので......」と小林部長は、羽生が自らの意思で競技後に行動したと説明した。

 そして、キス&クライで得点を聞いた羽生は、ボロボロと涙を流した。

羽生はフリーを滑りきり、結果は総合2位だった羽生はフリーを滑りきり、結果は総合2位だった 得点は転倒による5点の減点がありながらも154・60点。合計では237・55点で、マキシム・コフトン(ロシア)を残した時点でトップに立った。だが、コフトンがSPに続いてフリーでも羽生を上回り、合計を243・34点にして優勝。羽生は2位という結果になった。

 羽生の得点の内訳は、成功した3つのジャンプはきれいに決めて、転倒したジャンプもループ以外は完全に回ったと判断されており、妥当な評価。演技構成点は5項目全てが8点台で全体でも最高の84・02点だった。それは、予定した演技をしっかりこなせば合計で300点近い得点が獲得できる羽生と、その他の選手の実力差がかなりあるということの表れともいえる。

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