現役アイドル兼プロレスラーの渡辺未詩 情緒不安定状態で組まれた絶対エースとの一戦に「ここで変わらないと、たぶん一生このままだ」 (2ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko

 中学はソフトボール部に入部。前田敦子主演の映画『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』に憧れて、「あっちゃんみたいな青春を送りたい!」と思ったのがきっかけだ。

 朝練から夜遅くまで、ソフトボール漬けの毎日が始まった。渡辺は筋肉がつきやすいタイプで、見る見るうちに筋肉質な体になっていった。

「華奢なのが正義だと思っていたので、すごく嫌でした。でもボールを捕るためには足腰と肩を強くしなければいけないから、逃げられなかった。たくさん日焼けもして、思い描いていたアイドル像からどんどんかけ離れていくのが本当につらかったです」

 中学3年生の時、受験を控え、クラスメイトたちが将来のことを考え始めた。渡辺の親友は、調理師になるために専門高校に行くという。衝撃を受け、「自分は何がやりたいんだろう?」と考えた時、「アイドルしかない」と思った。アイドルになるには、ルックスもスタイルも、何もかもが足りないと思ったが、好きなアイドルのサクセスストーリーを見聞きするうちに、「可能性はゼロではない」とも思うようになった。

 高校でもソフトボール部に入部。筋肉質だったことから「自分は太っている」と思い込み、不健康なダイエットを繰り返した。

「今考えると、たぶんそこまで太ってなかったんですよ。でも気になる年頃だったので、断食したり、キャベツに塩をかけて食べたり......。その反動でめっちゃ太って、『もう無理だ、アイドルなんてなれない』と絶望しました」

【ネガティブに思っていた「筋肉」が喜ばれたオーディション】

 アイドルになる夢は捨てられずにいた。時代は"アイドル戦国時代"。テレビに出られるアイドルは、ほんのひと握りだ。そんな中、ステージを中心に活動していた乙女新党のライブに行き、渡辺は「私はこれになりたい」と思った。高校2年生の時、乙女新党の解散ライブの際には、もう乙女新党にはなれないことが悔しくてたまらなかった。そこから"ステージアイドル"(と、渡辺は呼ぶ)のオーディションに応募するようになった。

 とあるグループの候補生に選ばれたが、グループ内のオーディションで落ちてしまう。それでもどこか諦めきれずにいたところ、高校3年生の夏休み直前に見つけたのが、アプガプロレスのオーディションだった。

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