レースクイーンもグラビアも素行の悪さで仕事なし→上福ゆきが東京女子プロレスに入るまで【2023人気記事】 (2ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko
  • photo by 林ユバ

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 上福は1993年2月20日生まれ、神奈川県藤沢市で育った。父、母、3つ上の姉がいる。

 父は温厚で、曰く"ポエマーみたいな男"。「勉強よりも友だちを大切にしなさい」と教えられた。母は厳しく、「強く生きなさい」というタイプ。上福が中学生の時、先輩に殴られて歯が欠け、学校に呼び出された母に泣きついたことがある。すると母は「家庭に持ち込むな」と一蹴した。

「『1本折られたら、2本折れ』くらいの勢いでしたね。本当はきっと優しくしてあげたいんだろうけど、仲間外れにされた時とかも、基本的に『やられたらちゃんとやり返してこい』という親でした」

 上福は子供の頃から「変わっている」と言われていた。ランドセルも、赤ではなく緑を欲しがった。女の子とビーズやお人形で遊ぶよりも、男の子とベイブレードで遊ぶほうが好きだった。カエルの死骸を見ても「怖い」と言ったら負けだと思い、面白がる振りをした。「自分でもちょっと変わっていたと思う」と振り返る。

 小学校6年生で、身長は163cm。地震が起きると「上福が転んだ」とからかわれた。身長が高いことがコンプレックスで、「こんなに大きくて、この先、世間に馴染んで生活できるのかな」と不安に思っていたという。

 中学ではバドミントン部に入部したが、「態度が悪い。帰れ」と怒られたので帰った。本当に帰ってしまったことで「ガッツが足りない」とまた怒られ、ダルくて2カ月で辞めた。野球部のマネージャーもやったが、女の先輩に「男目当てだろ」と言われ、ダルくてすぐに辞めた。暇を弄び、やんちゃな仲間とつるむようになった。一方で、一生懸命に頑張っている人を羨ましく感じていた。

「自分も何かを見つけたいと思って、先生に相談したんです。そうしたら、『今さら?』って言われたんですよ。そのひと言がすごい響いちゃって、そこから『何を始めても遅いんだ』っていう気持ちで過ごすようになりました。卑屈でしたね」

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