那須川天心を「未来の世界王者かを判断するのは難しい」 米識者たちはボクシング転向3戦目をどう見た? (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke

【識者たちも成長を称賛】

 筆者個人として最も好感が持てるのは、プロボクサー転向以降の那須川が1戦ごとに成長の跡が見られることだ。2023年4月の与那覇勇気(真正)戦よりも同9月のルイス・グスマン(メキシコ)戦のほうがよかったし、そのグスマン戦よりも今回のロブレス戦はさらによかった。スピード、スキル、フットワークは紛れもなく一級品。それに加え、今回のロブレス戦では1発ずつのパンチに、より体重を乗せられていた印象だった。

 那須川vsロブレス戦の映像をチェックした欧米のメディアに尋ねても、やはり那須川が進歩していることを指摘していた。元『リングマガジン』の編集者で、現在は米スポーツメディア『スポーティングニュース』で健筆を振るうトム・グレイ氏の見方はこうだ。

「すばらしいスパーリングを積んだのか、那須川の技術には磨きがかかっていた。キックボクシング時代の経験が助けになっているとしても、ボクサーとしては経験不足にもかかわらずナチュラルな戦いを見せていることに感銘を受ける。ジャブ、ボディ打ち、カウンター、フットワーク、スピード、反射神経を備えていて、まだ25歳と若いのも心強い」

 プエルトリコ出身のフリーランスライターで、現在はクリーブランド在住のカルロス・トロ記者も那須川の成長ぶりを認めている。

「那須川は優れた左パンチと飛び抜けたスピード、フットワークを持っており、スタミナ、闘争本能、リングIQにも特筆すべきものがある。プロデビュー戦の頃と比べ、3戦目では規律正しさとフットワークに向上が見られた。那須川は下がりながらでもジャブを出し、相手のプレッシャーを食い止められる能力を持っている。それは、若いボクサーにはなかなかできることではない」

 キックボクサーとして"神童"と呼ばれた那須川の格闘センスは本物であり、ボクサーとしての1戦ごとの成長は「適応」「慣れ」という言葉に置き換えられるかもしれない。未知数の要素は多いものの、さらに強くなるポテンシャルは十分。このままボクサーとしてアジャストメントを進め、技術も向上すれば、数年後にとてつもないボクサーに成長する可能性を感じさせる。

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