148cmの天才レスラーが世界一小さいプロレス会場で宙を舞う 駿河メイが語る入団1カ月での衝撃デビュー (2ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko

 将来の夢はフィギュアスケート選手。幼稚園の行事でスケート場に行った時、だれよりもうまく滑れたメイは「イケるんじゃ?」と思ったという。小学校に上がると休み時間、教室で机を移動してスペースを作り、フィギュアスケートごっこに明け暮れた。

 中学、高校ではバスケ部に所属。高校ではキャプテンまで務めた。

 プロレスとの出会いは高校2年生の時。深夜までテスト勉強をしていた時のことだ。ふとテレビをつけたら新日本プロレスの深夜番組が放送されていた。真夏のリーグ戦・G1 CLIMAXだった。

「EVIL選手が相手の首にパイプ椅子をかけて、それをパイプ椅子でかっ飛ばして、『ホームランだー!』って言ったんですよ。あまりにも衝撃的で、プロレス好きの友だちに『これっていいの? 凶器っていうやつじゃないの?』と連絡したのが、好きになり始めたきっかけです」

 3年生(2017年)の夏、初めてプロレスを生で観戦した。新日本プロレス大阪城ホール大会。メインイベントはケニー・オメガvs.オカダ・カズチカ。"60分時間切れドロー"となった伝説の試合だ。

「『一生終わんねー!』とか叫びながら、興奮して観てました。プロレスの入場シーンが好きだったので、『入場を見るの、楽しいな』っていう純粋な気持ちと、あと『どうやったらこんなふうに闘えるようになるんだろう?』というのが素朴な疑問でしたね」

 秋から本格的な受験勉強が始まった。管理栄養士になりたくて、行きたい大学も決まっていた。しかし、受験勉強も大変、大学4年間を過ごすのも大変、就職するのも大変。本当に自分にできるのだろうかと考えたら、「もっと他に好きなことがあるかもしれない」と思った。水泳、スキー、プロレス......。そこで「プロレス、あるのでは!?」と思った。

 週刊プロレスの選手名鑑で女子プロレスの団体を探した。身長148cmのメイは、自分と同じくらいの身長の選手をリストアップ。その選手たちが所属する団体を調べているうちに辿り着いたのが、我闘雲舞だった。

 YouTubeを見ると、市ヶ谷のマットプロレスが出てきた。マットの上で選手たちが激しい試合を繰り広げるのを見て、衝撃を受けた。「この人たちがここでやっているなら、自分もできるかもしれない」と思い、我闘雲舞に入団しようと決めた。

「他の団体も全部見ましたが、自分は市ヶ谷のプロレスに惹かれたんですよね。あと、(代表の)さくら(えみ)さんが女子プロレス大賞を受賞していたので、『あの有名なやつだ!』と思ったのもあります」

 母には猛反対されたが、「大学に合格したら上京してもいい」という許可を得た。母は受験前の気の迷いだと考え、合格したら大学に行くだろうと思っていたようだった。メイは必死に受験勉強に取り組み、見事志望校に合格。もちろん大学へは行かず、上京してプロレスラーを目指すことになった。

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