猪木とアリに芽生えた友情 実況アナ・舟橋慶一は世紀の一戦に「究極の『無言の会話』を交わした闘いだった」 (4ページ目)

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji
  • photo by 日刊スポーツ/アフロ

 47年前の日本武道館。アリ戦にかけた闘魂を舟橋は、あらためてこう強調した。

「猪木さんは、あの試合でプロレスのステータスを上げ、広く世間に認知させようとしていた。日本プロレス時代から、猪木さんはプロレスが『ショー』と言われることを気にしていました。ただ、ほとんどのレスラーにとってはそれが当たり前で、商売だと思っていた。そんな中で、猪木さんだけがプロレスが市民権を得ることに命をかけたんです。

 それが"猪木イズム"だと私は思っています。その考えを藤波辰爾、長州力らが継承して闘ってきたからこそ、新日本プロレスの繁栄があった。すべての原点は、やはり猪木イズムなんです」

 昨年10月1日に亡くなった猪木に対して、舟橋は天を見上げながらこう思いを馳せた。

「アントニオ猪木は、夢追い人です。最後まで、世界のゴミ問題を解決しようと、水プラズマ使った廃棄物処理の実現を目指していたことからもそれはわかります。今、猪木さんの純粋さを思うと感動さえ覚えますよ。あれほどの人は、今後もなかなか生まれてこないでしょう」

【プロフィール】
舟橋慶一(ふなばし・けいいち)

1938年2月6日生まれ、東京都出身。早稲田大学を卒業後、1962年に現在のテレビ朝日、日本教育テレビ(NET)に入社。テレビアナウンサーとしてスポーツ中継、報道番組、ドキュメンタリーなどを担当。プロレス中継『ワールドプロレスリング』の実況を担当するなど、長くプロレスの熱気を伝え続けた。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る