「6・26」アントニオ猪木vsモハメド・アリの実況アナウンサーが振り返る猪木の本当の心情 (3ページ目)

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji
  • photo by 東京スポーツ/アフロ

 その思いが、NETで決定権を持っていた三浦の心を動かしたのだろう、と舟橋は見ている。

「三浦さんも、猪木さんの純粋な部分が琴線に触れて、アリ戦を実現させてやろうと動いたんだと思います。三浦さんも猪木さんと同じように純粋なところがありましたね」

 新日本プロレスとNETは、前哨戦としてある試合を実施する。それは、ミュンヘン五輪の柔道で二階級制覇を成し遂げたウイレム・ルスカと猪木の「異種格闘技戦」だった。

「このルスカ戦の時点でも、『本当にアリとやるのか?』という雰囲気はまだ社内にありましたけどね。そんな疑問を抱きながら、私はルスカ戦の放送席に座りました」

 試合は1976年2月6日、日本武道館。「格闘技世界一決定戦」と銘打たれたルスカとの一戦で、舟橋は猪木の気迫に圧倒されることになった。

(2)「あれはアントニオ猪木でなければ見せられない瞬間だった」アリ戦の前に行なわれた異種格闘技戦>>

【プロフィール】

舟橋慶一(ふなばし・けいいち)

1938年2月6日生まれ、東京都出身。早稲田大学を卒業後、1962年に現在のテレビ朝日、日本教育テレビ(NET)に入社。テレビアナウンサーとしてスポーツ中継、報道番組、ドキュメンタリーなどを担当。プロレス中継『ワールドプロレスリング』の実況を担当するなど、長くプロレスの熱気を伝え続けた。

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