グレート・ムタの日本デビュー戦の失敗に、馳浩は「俺が盛り上げてやる」 大流血の死闘を締めた「担架へのムーンサルト」 (3ページ目)

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji
  • 山内猛●撮影 photo by Yamauchi Takeshi

――まさに、2人のすごさが出た試合でしたね。

「あとは、馳さんが履いていたイエローのパンツが、血にまみれたら気持ちの悪いブルーみたいな色になるんやってことも覚えてます(笑)。そして、何より忘れられないのはフィニッシュです。

 結果は、クライマックスでムタがリング下から担架を持ち出して振り回し、レフェリーを殴っての反則負けになるので、正確にはフィニッシュとは言えませんが......それでも暴れ続け、担架に馳さんを乗せた状態でムーンサルトプレスを炸裂させた。まさに芸術的でした。

 そのまま馳さんを担架で運ぶことができるわけですから、今で言えば『サステナブル』、『SDGs』ですね。洗い物を減らす、みたいなことです(笑)。あらためて、よくできたシーンだったと思いますよ。あの"担架ムーンサルト"で、『グレート・ムタ』は『武藤敬司』とは完全な別物だというキャラづけができたと思います」

――ベビーフェイスの武藤敬司とは真逆の、極悪ヒールのグレート・ムタという対極の構図が完成しましたね。

「ひとりの人間がまったく別のキャラクターを使い分けたからこそ、武藤さんはもちろん、ムタも日米でカリスマになったんだと思います。そういう意味で、この馳戦は分岐点でした。この試合がなかったら、今年の元日に日本武道館で実現した中邑真輔戦もなかったかもしれない。ムタのことを『マイアイドル』だなんて、真輔も言わなかったと思いますよ(笑)。

 ただ、ムタvs馳はこの広島で終わらないんです。ここで打った布石を、2年後につなげるんですよ」

(後編:馳浩が仕掛けたグレート・ムタ戦での布石に「なんてすごい流れなんや!」 引退したムタの功績も振り返った>>)

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る