『BreakingDown』の審査員・大沢ケンジが語る安全性問題。エンタメとして「らしさをどう残すのか」 (2ページ目)

  • 篠崎貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro
  • photo by Breaking Down

露呈した問題点

 さらに朝倉未来は、大会前日の11月2日の会見で、"会津の喧嘩屋"久保田覚が、対戦相手のアドリブまさお(元プロボクサー&YouTuber)をパイプ椅子で殴打し、まさおがケガを負って試合が中止になったことについて、「もちろん本人の反省も大事だと思うし、僕らもセキュリティーの強化だったり、度がすぎたことをしないようなアナウンスだったり、同意書だったりとか、そういったところもしっかりしていく」と、安全面を強化していくとした。

 初回大会からここまで、賛否両論を巻き起こしながら拡大してきた『BreakingDown』だが、今回の前日会見でのアクシデントは大きな波紋を広げた。大会後、審査員を務めた大沢氏に安全面について話を聞いた。

――まず、前日会見での騒動について、率直な感想をお願いします。

「盛り上げようとする気持ちが間違った方向にいってしまった印象です。やりすぎ、いきすぎということ。以前にもパイプ椅子が飛んだことはありましたが、今回は相手がケガをして試合が流れたわけですからね。武器を使う、物を投げるといった行為は、予期せぬ大きな被害につながる。盛り上げ方の度合の問題ですね」

――どこまでがやりすぎなのか、そのボーダーラインを個人に委ねるのはリスクもあると思います。未来選手は「アナウンスや同意書」の必要性も話していました。

「越えてはいけないラインは人それぞれ違いますし、ましてプロではない人たちが多く参加しているわけですから。目立ちたい、爪痕を残したいという思いから過激な行動をする人も出てきます。運営側が椅子を投げることを禁止したり、乱闘自体に制限を設けることもできますが『どこまで?』という難しさもあるでしょう。事故が起きないようにするのは必須として、安全性を保ちながら"BreakingDownらしさ"をどう残すのか、が課題じゃないでしょうか」

――「やったもん勝ち」になっている部分もある?

「やりたい放題にやった人が結果的に本戦出場するとなると、それが成功例になってしまう。『とにかく暴れればいい』みたいなことは避けたいですね。

 ただ、『BreakingDown』はヒリヒリしたオーディション(『BreakingDown4』から導入)からの試合という流れがウケているのも事実で、制限のかけ方によっては通常の格闘技の大会と変わらなくなってしまう。そうなると『BreakingDown』じゃなくてもいいじゃないか、となってしまいます。トラッシュトークなど方法はいろいろありますが、お互いに絶対負けられない状態で試合を迎えるから価値が出るエンターテインメントですから、それがないとローリスクな、ただの技術が低い人同士の戦いになってしまいます」

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