いとこの浩樹だからこそ知る井上尚弥の素顔。ドネアとの再戦秘話、珍しい出来事を明かした (4ページ目)

  • 篠崎貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro

――浩樹選手から見て、特にすごいパンチは?

「右ストレート、いや、やっぱり左フック......ボディもありますね。言ってしまえば全部です(笑)。相手からしたら、どのパンチを警戒したらいいかわからない上に、尚弥はテンポも速いのでペースも握られてしまう。それで『こんなはずじゃないのに......』と不用意にパンチを振ったりすると、ドンとカウンターを合わせられてしまいます。

 試合の最初はジャブやステップで様子を見て、踏み込みの速さなど相手の力量を掴む。その見極めも速くて、『こんな感じだったら、これくらいのジャブは当たるだろう』といったようにどんどん更新しながら試合を進めていく。そして、閃きとベストなタイミングで相手をKOする。完璧ですね」

――尚弥選手はオフェンス力が注目されますが、ディフェンス面もピカイチです。

「自分がパンチを打ったあとに、必ず相手にもらわない位置にいますね。あと、尚弥の場合はあのオフェンス力がディフェンスにつながっている部分もあります。『攻撃は最大の防御』の最たるものです。あの攻撃をされると、相手は警戒しながらパンチを打つので攻撃力も半減しますし、パンチも避けやすくなります」

復帰後に目指すところ

――ドネア戦後、尚弥選手が『ザ・リング』のPFPで1位になりました。それについて話をしましたか?

「がっつり話はしていませんが、『おめでとう』とは伝えました。でも僕は、復帰して(テレンス・)クロフォード選手を倒し、先に1位になってやろうと思っていたので、心の中で『クソッ』とも思いました(笑)」

――クロフォード選手といえば、エロール・スペンスJr.と共にPFP上位の常連でもあるウェルター級の強豪です。その選手を倒したとなれば、確かに1位も見えますね。

「そうなんですよ。それで"ドヤ顔"をしたかったのに......尚弥には、『(PFPで)早く殿堂入りとかしてランキングからいなくなってよ』とも言いました(笑)」

――復帰後の階級は、ウェルター級と決めているんですか?

「いえ、特には。もともとはスーパーライト級でしたから、そちらでもいいです。ただ、ウェルター級は過去に日本人の世界チャンピオンがいないので、そこを狙いたい気持ちもあります。世界的に強い選手が揃う"激戦区"の階級ではありますが、それを理由にウェルター級を避けることはしたくないです」

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