目前だった井岡一翔の「統一戦計画」は遠のくばかり。新ライバル誕生の可能性は? (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Kyodo News

アンカハスには「3つのオプションがある」

 ところが――。アンカハスは井岡戦に真っ直ぐに進む選択肢もあったのだろうが、ここでオプショナルの防衛戦を挟む決断を下した背景には、統一戦を実現させるだけではなく、そこで勝つために最善の準備がしたいという陣営の思いがあったに違いない。昨年4月以降、リングから遠ざかったまま統一戦に臨むのではなく、錆びつきを落としてから大一番へ。

 その考えは適切なものだし、ファンにとっても歓迎すべき方向性に思えた。ただ、結果は裏目に出てしまう。大事な前哨戦にベストコンディションで臨めなかったこと、より危険の少ないもうひとりの対戦相手候補だったペドロ・ゲバラ(メキシコ)を選ばなかったことなど、今頃、陣営の心にはさまざまな悔恨の思いが去来しているかもしれない。

 ともあれ、この結果によって、井岡側の今後が難しくなったのは間違いない。ほとんど手中にあったビッグファイトが霧散。統一戦を目指すにしても、また新しい方向性を模索しなければならなくなった。

「統一戦がしたいし、最高の相手と戦いたい。今夜の私はウォリアーと戦い、不可能と思われたことを可能にしたんです」

 新王者マルティネスは試合後のリング上でそう述べており、ベルトの持ち主が変わっても、井岡がWBO王者との統一戦に邁進できる線が消えたわけではない。ただ、リング上で「11歳からの夢が叶った」と感涙していた新チャンピオンは、戴冠後の最初の試合で、日本での挙行が条件となるだろうリスキーな統一戦をいきなり望むかどうか。

 また、前王者アンカハスはマルティネスとの再戦条項を保持しており、これがどうなるかも現時点では読みづらい。キーマンのひとりであるギボンズは、「アンカハスには3つのオプションがある」と述べている。そのうちの最初の2つは"再戦条項行使"と"バンタム級への昇級"。筆者にも明かされなかった3つめの選択肢は、おそらく"スーパーフライ級の他の強豪との対戦"だろう。

 3月1日、アンカハスとトレーナーがバンタム級への昇級を希望しているという報道が流れたが、それも本決まりではないとのこと。アンカハスは4日にフレズノ、5日にサンディエゴで行なわれる2つのカリフォルニア興行に足を運び、じっくりと今後について模索するつもりだという。

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