『ハイキュー!!』の魅力を元日本代表の福澤達哉が熱弁「共感できるキャラクターが必ずひとりはいるはず」 (3ページ目)

  • 中西美雁●取材・文 text by Nakanishi Mikari

【春高バレーのレベルアップは『ハイキュー‼』の影響も!?】

――劇場版では日向と音駒の孤爪研磨のライバル関係も描かれますが、福澤さんの同世代でライバルの選手はいましたか?

福澤 私の場合は清水邦広(パナソニックパンサーズ)ですね。私は洛南、清水は福井工大福井でしのぎを削りあいました。

――福澤さんと清水さんは高校時代、春高やインターハイなど全国大会では常に対戦していましたね。

福澤 そうですね。互いの手の内を知った相手との対戦は、特別感もありますし、「あいつには負けたくない」という意識が強くなりました。日向と孤爪のように、同世代にライバルがいたことは、すごく恵まれていたと思います。

 そういった「関係性」は、普段私が解説をする時に大事にしているテーマのひとつです。選手の背景、成長過程、相手の選手との関係性などを知った上で試合を見ると、また違った見え方になりますから。今回の『ハイキュー‼』の劇場版では、その「関係性」が大きなテーマになるでしょうから、そこも楽しみですね。

――福澤さんは「春高バレーのレベルが上がってきている」と話していますが、『ハイキュー‼』の影響もあるでしょうか。

福澤 代表が活躍していることもあるでしょうが、『ハイキュー‼』の影響は大きいと思いますよ。単純にバレーに関心を持つ子供たちが増えたでしょうし、バレーを始めてからも、練習方法、さまざまな技術、攻守の戦術などを、楽しみながら無意識のうちに学ぶことができる。これほど強いツールはないですね。

――「ゴミ捨て場の決戦」の中で、特に楽しみにしているシーンはありますか?

福澤 ずっとクールだった孤爪が、試合の中盤から終盤にかけて、珍しく感情を出した場面でしょうか。やっぱり思い入れの強い試合になればなるほど、感情も自然と表に出てくるものなんですよね。

――劇場版の『ハイキュー‼』が公開されることで、またバレー界に大きな影響がありそうですね。

福澤 バレーに携わる人間としても、とてもうれしいです。『ハイキュー‼』を入り口に「バレーの試合を見てみたい」と思う方は多いでしょうし、実際にⅤリーグや日本代表の試合を見て、「『ハイキュー‼』にもこんなシーンがあった」とバレーに興味を持ってくれたらいいですね。

 その流れは、すでに東南アジア、世界中に広がっています。やはり漫画やアニメは、日本が世界に誇る文化のひとつです。昨年のネーションズリーグのフィリピン大会で、日本代表が地元ファンから大声援を受けるなんて、以前は想像すらできませんでした。『ハイキュー‼』は間違いなく、日本と世界のバレー界をつなぐ"架け橋"になっています。

 それも、作者・古舘春一先生のバレーに対する愛があってこそでしょう。あらゆる描写から、ご自身がかなり勉強されているのがわかりますし、「もっとバレーを知ってもらいたい」という思いも強く感じます。私も力をもらって、バレーというスポーツを少しでも日本に広めていけたらと思います。

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